お久しぶりです!

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「源泉竜を倒すのはあたしの宿願ですけど、とどめを刺せるのはあんたの神器だけよ。人の世の安寧を思うならあんたももちろん、放っておかないわよね?」 「君は巨神竜だろう? 君が何より重きを置くのは、自分自身をいかに強く高め、戦うかだと思っていたが」  人々の為、平和の為に戦うなど、神話に伝わる巨神竜様の印象とは異なります。私自身も、生前にシーちゃんとお会いした時からそれは少々気になってはいたのですが。 「当然っしょ。あたし達がグランティスで興した大陸軍の目的は、この世界を元通りのひとつの大陸に戻すこと。あんたが白銀竜の神器で裂いてくれたこの大地をね」  一体全体、なんでそんなことしたんだか。シーちゃんはそう問い詰めますが、ソウジュ様はむっつり黙り込んで答えません。お顔からも決して口を開かないぞ、という決意がありありとわかりますので、シーちゃんもそれ以上の追及を諦めます。  この時にシーちゃんが話していて知りましたが、ソウジュ様は白銀竜様の神器をもうお持ちではありません。私の最期の時、大地を割るため地に突き刺したかの神器は、グラスブルーが空に浮かぶ折に海中に没してしまったのだそうです。もう使い道もないでしょうし、ソウジュ様には回収する意思はなさそうです。 「ここがひとつのおっきな大陸だった頃は、強い奴がどこにいるのかもすぐわかって、その場所に行くのも陸続きだったのに。三大陸に分かれてからはG大陸以外の情報も入りにくいし足を向けるのも手間だしで億劫ったらないわ。ほんっと余計なことしてくれたもんよねぇ!」 「それはまぁ……君にとって迷惑だというなら、弁解はしない」  不便をかけてすまない、などとごく当たり前のように頭を下げてしまうソウジュ様ですが。 「何の意味もなくやらかしたってんじゃないなら、簡単に頭下げてんじゃないわよ。つまんない男ねー」  これはまた辛辣な。シーちゃんは……と同時に、巨神竜様が、でしょうか。意志が強く、己の道を貫ける人がお好きですから。相応の理由さえあれば誰に迷惑をかけたとしても、大陸を分けてしまったこと自体を謝罪するべきとは考えていなかったようですね。  強い言葉を投げられたソウジュ様ですが、別に心に響いたというわけでもなさそうで、涼しい顔でシーちゃんに向き合います。 「用件はわかった。確かに、近々に対処するべきかもしれないな」  実を言うと、ソウジュ様は人の世にどれほど被害が出ようが、そんなに気にしているわけではありません……お優しい方ではありますが、幼少の折にツバサ様が捕らわれ、人々にどのように扱われたか。あの頃の心の傷が癒えていないので、戦乱によって人命が失われることにさして心を動かされないのです。  かと言って、対処さえすれば被害の規模が小さくなるかもしれない……それをわかっていて放置してしまえるほど薄情でもありません。シーちゃんと共に大陸軍で戦うことを約束しました。
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