フウ君の旅立ち

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フウ君の旅立ち

「そういうわけで……残念だが、僕はまた旅立つことになった」  その晩、三人で夕食を済ませた後、ソウジュ様はそう告げました。ソウジュ様もコウ君フウ君にはすっかり心を許しているので、シーちゃんと話している時と違い、本当に残念そうな内心が顔に表れています。 「しょうがないよね……ソウ兄にしか出来ないことがあるって、直々に呼ばれてるんなら」 「ソウ兄ってそんな強かったんだ……」  ソウジュ様は、自身の正体……太陽竜様であることまでは、ふたりに伝えていませんでした。フウ君もコウ君も、ソウジュ様の穏やかな面ばかり見てきましたから、まさか大陸軍の責任者が迎えに来るほどの手練れなどとは夢にも思わなかったでしょう。 「今後、また生きて会えるともわからないから、最後に話しておかなければならない。フウ、君のその赤い髪のことだ」 「え?」 「それを持つ者の辿る運命を、君は知っているのか?」 「……知ってる。ユウ兄が教えてくれたから」 「コウも?」 「……うん」  実を言うと、ユーリはコウ君に赤い髪に関する詳細を教えていません。コウ君はグラスブルーの影の世界に辿り着いたことでそれを知りました。いずれひとつの存在に成るわけですから、クエスの知っている情報は全て、その時点でコウ君にも流れ込んできたのです。  そして、ここで「うん」と答えているのはそーちゃんです。彼には、私達から弟のあおちゃんが赤い髪で、二十歳になると神罰を受けてしまうとお話ししたから知っているのです。  フウ君の大事な話をしている時にこんなことを考えているのはちょっと申し訳ない気がする、とは思いながらも。そーちゃんはあおちゃんのことを思い出していました。結局、アオってどうなっちゃったのかな。普通に考えたらもうとっくに死んじゃってるってことなのかな……と。
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