動き出す陰謀

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動き出す陰謀

「もう七時半だぞー! 起きろー!」 「う~ん……頭痛い」  普段のコウ君は別に朝も弱くなく、出勤に合わせた時間できちんと起きてきます。朝食はお隣の宿の食堂で食べていますが、いつもは七時半ちょっと前には来店するコウ君が起きて来ないのでカイン君が様子を見に来ました。 「だーから適当なところで切り上げて解散しろって言ったのに。おっさんがダラダラ飲んでるのに夜中まで付き合うからこうなんだよ」  コウ君がそういう状況で断りきれない性格なのを知った上で、カイン君は苦言を呈します。もうすぐ十五歳ですが未だ成人ではないコウ君はお酒を飲めませんが、勤め先の雇用主に誘われて、昨夜は居酒屋で夜遅くまでご一緒したとか。  頭が痛いのは二日酔いではなく、寝不足と、かつて階段で頭を打った古傷が痛んでいるようです。完治していても、睡眠不足や疲労の蓄積などで負荷がかかるとたまにズキズキ痛みます。  アルディア村でのコウ君のお仕事は、縁日の金魚すくいの金魚のお世話です。月に一度の催事で観光客を呼んでいるアルディア村ですから、お祭りに関する業者は自然とこの地に集まっています。その業者の内のひとつに無事、お勤め出来ることになったのです。  金魚のお世話だけでなく、他の町で金魚すくいの屋台をやる人からの注文で金魚を運んだり、場合によっては屋台のお手伝いに駆り出されることもあり、けっこう忙しいです。でも、元より幼い頃からコウ君……ではなく、そーちゃんは子亀や金魚などに興味津々でしたから。好きな物に関わる職に就けて幸せそうだなぁと思います。相変わらず表情に全然出ないのですが、満足していそうなのが伝わってきます。  辺境の村で地味ながらも好きな仕事に就き、ひっそり生涯を終える。なんてことが許される身ではないことは重々承知でしたが、コウ君が成人を迎えるのを見越して現れた来訪者によって平穏は終わりを告げることになりました。 「わらわは統一軍人事部、鳥精霊のアオイと申す」  どこかお店に入るとかそういったこともなく、往来で声をかけて一方的に名乗るだけ。  ソウジュ様が濁したために本人はそうとは知りませんが、よりにもよって父を統一軍に殺されたコウ君に統一軍の勧誘担当者が訪ねてきました。  アオイさんは名前の通り真っ青の長い髪をお持ちで、腕に羽衣を纏っています。統一軍の中では羽を出しっぱなしで歩けますが、人の社会でそのまま出歩くわけにはいかず、羽を羽衣に変えて擬態するのです。その羽衣を奪われたり燃やされたりすると二度と羽を取り戻せないので大変です。
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