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「それにしたってなぁ……親父さんだって統一軍に行って生きて帰らなかったし、ソウ兄だってついこの前まで統一軍と戦ってたんだろ? また大陸軍の女王様に頼まれて一緒に戦うなんてことになったら、ソウ兄を相手しなきゃならないんだぞ?」
ソウジュ様はシーちゃんのところで戦う目的を果たしたのでもう大陸軍にいる理由もなく、フウ君の現状を知るためR大陸へ移動しています。
「ソウ兄が今更、大陸軍に戻る理由はないと思う。少なくともフウの件が何とかなるまでは傭兵してる場合じゃなさそうだし」
シーちゃんがソウジュ様を頼ったのは彼の神器でしか源泉竜様を滅ぼせないからであって、それを果たした今となってはむしろ太陽竜様と戦うことが巨神竜様たる彼女の矜持というもの。コウ君はそこまで理解して話しているわけではありませんが、その点はたぶん問題ないと思います。
「しょうがねぇなぁ……そこまで決意が固いなら引き止めるの無理そうだし。俺もついてってやるよ、統一軍」
「え~……いいよ、別に。カインに何かあったらネーちゃんに合わせる顔が」
ネーちゃんとはネイルさんのこと。カイン君のお姉さん、という二重の意味で、村の人達の多くが彼女をそう呼んでいます。
コウ君には内緒ですが、カイン君はフウ君と約束していました。いつかコウ君が、元のコウ君に戻る日が来るのか、自分が留守の間だけでいいから見張っていて欲しいと。
フウ君もカイン君もすっかり今のコウ君と仲良しですし、どうしても元のコウ君に戻って欲しいかというと微妙な関係になってきてはいます。それでもフウ君にとってはこの世で唯一の血縁で兄なのは本物のコウ君の方です。今のコウ君と仲良くなったとはいえ、簡単に存在ごと見捨てるわけにはいきません。
「姉貴のことなら気にすんなよ。俺がいない方が縁談のひとつも進むだろうし」
カイン君はコウ君達より一足先に成人しました。子供の頃から聡い人でしたが、今もそれは変わりません。実際、ネイルさんはカイン君が村を出ている数年の間にお見合い結婚しました。カイン君が成人するまではとそういったお話を断っていたようです。
カイン君だって、たまたま同じ村に生まれただけの友達のためにどうしてここまでするのかというと……やはり、良かれと思ってしたこととはいえ、自分のした話をきっかけにコウ君とフウ君の関係が一変してしまい、少なからず責任を感じているのです。
特に今朝のように、コウ君が古傷が痛いと溢す度に、密かに胸を痛めているのは彼も同じでした。
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