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強くなるなら一緒に
「……あれ、朝じゃない」
朝の光に包まれるつもりで目覚めましたが、そこは久方ぶりの影の世界でした。
「久しぶり」
「ここでコウに会うのって、もしかして久しぶりどころじゃなくないか?」
もはや年単位で、そーちゃんが眠ってもこの影の世界で目覚めることがありませんでした。コウ君が自分の作業にいっぱいいっぱいで、そーちゃんを呼んでいる余裕がなかったからです。
そもそもコウ君からはそーちゃんが自分の体を使ってどのように暮らしているのかいつでも見られるので、すっかり放任していたのです。フウ君やカイン君とも上手くやっていて、村での暮らしも順調なのを知って、口出しせずとも任せて大丈夫。そう判断していました。
「便りがないのは良い便り、とか言うだろ。お互い順調で用事がなかったってことなんだからいいんだよ」
「てことは、今は用事があるんだ」
「ああ。統一軍のこと……」
コウ君が話し始めましたが、その前にそーちゃんは気が付きました。自分の体の異変に。
「最後に見た時より、オレの手足、でかくて長い」
「外の世界で十五歳になろうって生活してるのに、四歳の見た目のままだと違和感あるだろ。ここは現実世界じゃないんだから、ソウの認識に合わせて見た目が成長するんじゃないの」
「へー、そういうものなのか」
これまた息をするように当たり前に、コウ君は嘘八百並べてみせます。そーちゃんの認識ではなく、コウ君がいつも通りに幻で、認識を操作しているのです。本当のそーちゃんの体は四歳のままで、その上から大人に見える幻を被せているだけ。
コウ君は、「そう信じていた方が幸せでいられるなら」という基準でなら、平気で嘘をつく人みたいです……。誰かを幸せにする代わり、嘘をつく罪悪感を自分で背負い続けながら。
「で、何の話だったっけ」
「統一軍に行くことにしたんだって?」
「うん。もしかして、反対したくて呼んだとか?」
「違う。確かに、危なっかしいなぁって思わないわけじゃないけど」
コウ君はお父さんの死の真相を知りました。ユーリが影の世界に入っているので、彼の知っていること、感じていることはコウ君に伝わってしまったのです。それはコウ君にとっては最悪の情報の目白押しでしたが、それはまた別の機会にするとして。
「ソウが、フウの為になると思って決めたことに俺がとやかく言う資格はないから。好きにすればいいよ」
いくらコウ・ハセザワその人として暮らしてもらっているといっても、本当に実の弟を想うように行動してみせるそーちゃんに、コウ君は感心していました。
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