強くなるなら一緒に

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「違うんなら何の用事?」 「軍に入るってことはたぶん、軍事訓練があるだろ」 「あるだろうね」 「それ、俺にやらせてくれないかな。……普段任せっ放しなのに、やりたいことある時だけ体返せって勝手だと思うけど」 「元々コウの体なんだし、それはしょうがないけど……なんでやりたいんだ? そんなの」  コウ君は知っていました。このまま時が流れれば、自分たちはいつかソウジュ様と戦わなければならなくなる……フウ君を守るために。  ほんの数年の付け焼刃でソウジュ様に太刀打ち出来るはずもありませんが、せっかく入隊するのならそれを利用して少しでも戦う術を手に入れたいと考えていました。  ソウジュ様とそーちゃんの関係を考えるとそれを話してしまって良いものか。コウ君が考えていると、先にそーちゃんが口を開きます。 「やっぱりなんか嫌だな」 「何が?」 「コウだけ強くなるのは、なんでかわかんないけどオレがちょっと気に入らない」 「はぁ? その理屈じゃ俺こそわかんないわ」 「さっき自分でも言ったじゃん、都合の良い時だけ体返せなんて勝手だって」 「まぁ……そうだけど」 「だから。訓練の度に毎回代われっていうんじゃなく、半々ならいいよ」 「……いいんなら、それで頼むかな」 「りょうかーい」  そーちゃんは言葉の交わし合いで相手を伏せたことに満足げで口元がほのかににんまりしていますし、コウ君はちょっと不満げに口を曲げています。ふたりとも、影の世界で本来の自分としてなら、こうして表情が豊かです。  外の世界でコウ君が無表情なのは、本来入っているべき魂と別の者が入って動かしていることによる、体の拒絶反応なのかもしれません。  それはそうと、そーちゃんが途中で別の話に変えてしまったせいで、大事なことをコウ君に聞きそびれてしまいました。「コウ君は何のために強くなりたいのか?」という部分。残念ながらそーちゃんは、終ぞそれを思い出しはしませんでした。
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