終わりを目指す三人旅

2/3
前へ
/260ページ
次へ
 幼い頃。ユーリと手を繋いで歩くのはよくあることでした。このような接触に飢えていたわけではない、それなのに……。  思い出されたのは、コウ君ではないコウ君が初めて差し出してくれた小さな手。それを拒まず受け入れると決めて、ふたりで歩き出したあの日の気持ちでした。  しばらく上がり続けると、突然に黒い空間が天井に当たりました。しかし物理的干渉はなく、黒い天井は何の抵抗もなく頭を突きぬけます。  まるで地面に首から生えたみたいな奇妙な状況になり、フウ君はその状態のままきょろきょろと周りを見回します。 「ちょっとちょっと、まだ階段終わってないよ? 最後まで油断しないで上がりきらないと、足踏み外しちゃうってば」  それはやばいと思い直し、足元を見ようとしますがうまくいきません。慣れているというノア君に合わせるようにしてどうにか上がり切りました。  そこは灰色に舗装された長い長い一本道でした。空のただ中にあります。しかし、先ほどまでフウ君のいたアルディア村から空を見上げても、こんなものは見えなかったはずです。  一体この世界はなんなんだ、と改めてノア君を問い詰めたかったところで、道の先に佇む人影が目に入りました。 「ごめん、説明はひとまず後にして、あの人を紹介させてくれる?」  人影は微動だにせず、ノア君は小走りにそちらへ向かいます。フウ君も付き合って駆け足になります。  間近になってみると、その方は女性でした。丈の短く袖のない黒いワンピース身に着けて、頭には毛糸で編んだような帽子がちょこんと乗っかっています。服は涼しげなのに頭は暑そうな素材でちぐはぐじゃないか? とフウ君は感じました。  髪の毛の色がサクラ色なおかげで、私は思わず親近感を抱いてしまいます。 「この人はヒナ。めったに喋ってくれないんだけど、ボク達の大切な人なんだ。これからずっと一緒だからフウもよろしくね」 「よ……よろしく?」  一応、挨拶だけはしておきましたが、彼女は言葉を発しません。ちらりとフウ君に目をやりますが、すぐにあさっての方向へ目を背けます。  私達とはまた違った三人の長い旅は、このようにして始まりました。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加