王都ペルノ

1/1
前へ
/260ページ
次へ

王都ペルノ

 P大陸王都ペルノは、古代の遺跡と共に在る町です。石の煉瓦を積み重ねた当時の家屋やお城を可能な限り維持しつつ、当時の人と同じように暮らしています。もちろん、衣食文化などまで当時のままというわけではなく、現在らしい暮らしをしながら古代の建築物に住んでいるということです。  私達はこの町に来たのは初めてではありません。コウとそーちゃんと私の三人で旅暮らしをしていた時、数か月滞在し、旅の資金を稼いでいました。あの頃は王都などではなく国力だって他より特段に強かったわけでもなく、ごく普通の集落という印象だったのですが。もちろん、古代の遺跡に暮らすという浪漫には多くの人が魅了されていて、私もここでの暮らしはとても楽しかったです。  そーちゃんはまだ物心ついていなかったでしょうから、この町での思い出は記憶に残っていないでしょうね。 「お~い、コウ~!」  ネイルさんの報せを受けて大体この日くらいに着きそうだと予測出来ていたので、カイン君は町の入口の検問所近くで待っていてくれました。王立軍にお勤めのカイン君の口利きのおかげでコウ君は検問を受けずに町へ入ることが出来ました。  カイン君は二十五歳になっています。元々成人でしたから、コウ君が最後に会った時から肉体的に成長したわけではありません。しかし、五年分の社会的な経験やごく自然な老化から、あの頃より人として成熟したのが一目でわかります。 「あれから五年も行方くらますんだからなぁ、さすがに俺も心配したぞ~?」 「ごめん……オレは帰ってこれたけど、フウは」 「その辺の事情は俺も最近知ったよ。おまえやフウのその赤い髪が何を意味してたのか、っていうのをさ」  コウ君達と別離する前のカイン君は、コウ君達の運命を知りませんでした。P大陸王立軍にお勤めになって、そこでの軍事機密に触れることで、赤い髪を持つ者が神竜の転生体であると知ったそうです。 「軍事機密ってそれなりの要職でないと知らないんじゃないか。たった五年でそうなるなんて、やっぱりカインは世渡り上手いな」  まーあねー、とカイン君は涼しいお顔で肯定します。カイン君は正しく自己評価出来る性格の人なので、褒められてもそれが正しいなら謙遜などせずそのまま受け取ってくれます。 「せっかくだし、詳しい話は往来じゃなく俺達の引きこもり神竜様も交えてにしようか。お互いに情報交換もしたいんじゃないの? おまえとその、後ろにいるっていう神竜様もさ」  後出しをして気味悪がらせては申し訳ないので、コウ君はざっくりと、カイン君の目には見えないけれど私という存在がコウ君のそばに常にいることを先に伝えてます。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加