断罪竜の回答

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断罪竜の回答

 そんな真逆のふたりですがひとつ、共通点もあります。彼らがそれぞれ望む幸せは、彼らの生まれが恵まれないばかりにそうそうたやすく享受出来なかったということです。  この世で最も近い存在であるはずの血を分けた肉親を憎しみ合う関係とそのような環境の中で、彼らの心は荒みに荒んでいました。  彼らの存在を聞きつけたソウジュ様の来訪で自分達の辿る運命を知らされてもまるで動じず、きょうだいに対しては「安楽死でも生き地獄でも好きに選べ」と吐き捨てます。二十歳の誕生日、神罰の苦痛にのた打ち回りながらきょうだいはパーシェルへの逆恨みを、自分の生まれへの憎悪を吐き散らした末にソウジュ様に縋り、神器による情けで命を終えました。 「彼奴が死んで吾がこの体に成ると、太陽竜めは断罪竜の神器を探すべきであろうと提案した。その時点で何の手がかりもなかったから見つけるまでに五十年ほどもかかってしまったよ」  というわけでソウジュ様とパーシェルは五十年もの時を、共に旅して過ごしていたのです。 「断罪竜の神器って何が出来るんだ?」 「この大鎌で斬られた者は魂も体も塵となり、今後二度と世に発生しなくなる。罪深き者を転生させないための裁きの鎌だな」 「苦労して探したところでいつ使うんだ?」  ソウジュ様やシーちゃんでしたらそれぞれの目的で自分の神器を活用していますが、引きこもりのパーシェルにその神器の使い道があるのか? コウ君はそんな疑問を抱き遠慮なく口にします。深く考えるとちょっと失礼な質問にも思えますが、この場にいる誰も気にしていなさそうですね。 「使うも使わないも関係ない。神器を持ち自衛することで、断罪竜の持つべき力を不当に貶められないようにせよというのが太陽竜の意見だったな」 「太陽竜様や白銀竜様は、それでお辛い思いをされましたから……」  神竜族の同胞に、自分達と同じ思いをさせたくなかったのだと、私は思います……。  ひとりでこっそりしょんぼりしていたのですが、コウ君が頭を撫でてくれました。私には実体がないので感触はわかりませんが、心はなんだかほかほかしてきます。
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