断罪竜の対話

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 実を言うと、パーシェルに言われなくとも私も薄々、勘付いてはいたのです……感情として、それをなかなか受け入れ難くて見ない振り気付かない振りをしてしまいました。魂と体、記憶と感情の約束事をきちんと考えてしまうとそうなってしまうのではないかと。 「おそらく、白銀竜は二度と転生しない。生まれてくることこそ苦しみであると真理に達してしまい、輪廻より解脱しただろう。あの太陽竜めと対話した五十年の間に吾はそう判断した。そしてその苦しみをもたらしたのは人間という種の存在そのもの。生命の維持に欠かせぬこの星の水源は母神竜……イリサを失えばこの世界から水は消えてなくなるだろう」  わかりやすくまとめると、私が消えれば水を糧に生きている生命は絶滅する、ということですね。 「ソウジュ様の御心は、存在そのものがすでに消滅し、転生によってすら二度とお会い出来ない……確かなのでしょうか?」 「さすがに絶対とまでは断定しない、推測だ。その判断は貴女自身に任せるしかないな」  私は長い時、クエスの影の世界と通じていたおかげで地上にいたソウジュ様・ツバサ様を見守ることが出来ました。夢幻竜様の能力の性質上、そうして見ているあらゆる人の思考も覗き見ることが可能でした。  ですが……パーシェルは覗き見などでなく実際に五十年の時を共に過ごし、会話し、彼らの心に触れていたのです。先ほど並べ立てた推測はその上での判断で、軽視して良いものではなく……そう話しているパーシェルの顔には憐憫が表れています、はっきりと。 「現在の吾が在るのはあの時、太陽竜に救われたゆえのこと。太陽竜は白銀竜を救えなかったことを心から悔いていた。たとえ我が身に神罰を受けようと、白銀竜の無念を晴らせるならば吾は甘んじて受けようと思う」  喜んで受け入れる、とまでは言わないようです。見たところ、彼は現在の暮らしを心から楽しんでいる様子ですから。いくら恩義に報いるためとはいえ好き好んで捨てたいはずがないでしょう。
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