27人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ありがとうございます、パーシェル。ソウジュ様はこれまで、戦ってばかりの日々でしたから。あなたと共に旅をしている日々は穏やかで楽しそうでした。ですが、私は母神竜様などでなく、この星で生まれたただのイリサですから。白銀竜様の願いではなく、ソウジュ様のご意思に従います」
彼の感じた白銀竜様と、私の知るソウジュ様は必ずしも同一ではありません。私と母神竜様がそうであるように。そして彼自身が言ったように、ソウジュ様の御心がもはやこの世のどこにもないと言うのならなおさらです。
「もしソウジュ様が苦しみから逃れるために地上の生命を絶滅させたいと望んだのなら、自らの神器を用いていかようにも出来たはずです。そうしなかったということは望んでおられなかったのですよ。それに……私が消えたらソウジュ様は悲しまれます。これは絶対に間違いありません」
「ほう……断言するか」
「はい。謙遜などいたしません。ソウジュ様に想っていただけて私は幸せでしたから、そのお気持ちを疑ったりしませんよ」
「相分かった。吾とて無益な争いをしたいわけではない。確認がとれてすっきりしたよ」
パーシェルは苦笑しつつ、自分の喉仏をかりかりとひっかきます。太陽竜と離れてから早や百年、まるで喉の奥に小骨が引っかかったような気分だったものでな。そう言います。
太陽竜様への感謝の気持ちがあるからこその心の引っかかりです。私以外にも、ソウジュ様のことをそれほどまでにいたわって下さる方がいたという事実が私は嬉しかったです。
最初のコメントを投稿しよう!