ノア・グラスブルー

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 ノア君は湖を見ていましたが振り返り、空を見上げます。そこに彼らの先ほどまであるいていた道は見えませんが、ノア君は構わずそこを指さします。フウ君も導かれるままに空へ目を向けます。 「あの道をずっとずっとまー……っすぐ行ったら、君のお兄さんにも会えるよ」 「俺の……コウのこと? どっちの?」 「もちろん、フウのお兄さんっていったらどっち?」 「……」 「ごめん、まさか黙っちゃうくらい迷うと思わなかった」 「だって……俺はノアと違って何にも知らないんだ。あいつらがどういう意図で俺の側にいたかなんて」  ノア君は、コウ君達の行動はフウ君を想ってのことだと言ってくれますが、実感出来ません。一方的な善意の押しつけにすら感じてしまいます。それを自分が望むか否か、一度だって確認して貰えませんでしたから。 「ボクの口から本当のことだよって聞かされたってたぶんすっきりしないだろうから、あの道の果てまで行って本人に会うしかないんだろうね……でも、そこに辿り着くっていうのはこの世界の終わりでもあるから。そうなったらボクもフウも終わりってこと」 「そうなるってわかっていても、ノアはあの道を歩くのか?」 「うん……いつかは終わらないと、自由になれないから。ボクも、君も、みんなも」  傀儡竜は終末を司る神竜ですから、この世界を終わらせるのも自分の役目。彼もまた、この世界の永遠を信じていないようです。 「どうせいつか終わっちゃうなら、せめて今はちょっとでも楽しく過ごしたいって思わない? フウにとっては退屈な世界なのかもしれないけどさ。ボクは君が気付いてくれて、こうして一緒にいてくれるようになって前よりもっと楽しいんだ」 ……ノアがそう思うんなら、俺の一生も無意味じゃなかったって思っていいのかな。  自分が犯したわけでもない罪を償わされるために生まれて、理不尽に奪われるだけの命でしたから。自分は何のために生まれたんだろうと思い悩まされてきました。  自分がこうしてここにいることで、辛い役目を負わされたノア君が少しでも楽になれるのなら。
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