カイン・リークイッド

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カイン・リークイッド

 コウ君と私の旅の目的は、フウ君を手にかけて以来姿を消してしまわれたソウジュ様の姿を追い求めるためでした。  ソウジュ様の白髪と青い瞳という組み合わせは人間社会にはそうあるものではなく稀少で、街々を歩いてそういう人がいなかったか聞き込みをするだけでも有力な情報は頻繁に得られました。  それでも広い世界をたったひとりの人を探し当てるのは簡単ではありません。コウ君も千里眼を持っていますが、あれはあくまでどの辺りに目標があるかわかった上で見ないと意味を成しません。 「こんなんでどうかな」 「うわ、似てる似てる。相変わらず絵ぇ上手いよな」 「人事部で鍛えられたおかげかな」  聞き込みの際にソウジュ様の似顔絵があった方が良いのでは、というカイン君の提案で、コウ君の記憶するソウジュ様像を絵に描いてみたのです。  統一軍人事部で書類整理の仕事をしていたコウ君は、面接の際についでとして新入隊員達の似顔絵を書類に添えて提出したところ、これはわかりやすくて良いではないかと大評判でそれがすっかり定番化してしまいました。  結果的に統一軍は滅びたので後任は必要ありませんでしたが、コウ君が去った後にその仕事を引き継げるような技術をお持ちの人は果たしていたのでしょうか。  短期間で膨大な数の似顔絵を描いたことで手慣れたというのはもちろんですが、私としましてはやはりコウ君……いいえ、そーちゃんの出自から受け継いでいるのではないかと思うのです。ヒナマル家が代々磨き、培ってきた絵の技術はそーちゃんにも伝わっているのですよ、きっと。そう信じた方が幸せというか、救われる気がするので……そういうことにしたいと思います。  この時の絵を描くための画材は、カイン君の口利きで王立軍で使われているものをお借り出来ました。日雇いで食いつなぎ定住もせず、転々と移動する旅暮らしでお金の余裕が全くないコウ君は、こうしてカイン君によく助けてもらっていました。数年に一度くらいの頻度ですが旅の途中に王都ペルノを訪ねては、お互いの近況や思い出話に花を咲かせていました。
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