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幼いコウ君達の浅知恵で想像していたよりも、周囲の人達にそーちゃんがコウ君ではないとバレバレでしたし。コウ君は事情があって体を使わせてくれているけど、自分はソウという個人なんだよと正直に名乗らせてあげた方が良かったのではないかと。
そうならなかった以上、たらればの話に過ぎないですし、考えて悔やんだところで意味はないのかもしれませんけれど。はっきり「兄ではありません」と名乗ることでフウ君が反発する可能性だってありえるんですし。
「……カイン……?」
約束した通り、コウ君はすぐに交代しました。自分が移動した覚えがないのに王都ペルノにいて、しかもカイン君が床に伏せっている状況に戸惑っています。
「最後に会いに来てくれたんだろ? ありがとな」
「ああ……そう、なのかな」
コウ君とカイン君の交わした会話を知らないので、とりあえず深く考えるのはやめにして、目の前のカイン君の相手に集中することにします。
「体、悪いのか?」
「見りゃわかるだろー? 俺だってもうジジイだよ、歳とらないおまえらと違うんだから。人生五十年って言われてるんだし、長生き出来た方だよ」
「……自然なことなんだけど、やっぱりカインがいなくなると思うと寂しいな……」
カイン君を喪えば、コウ君の事情を知る人間の、それも対等の友人はいなくなります。そしてこれから新たにそうした友人を作るのは不可能だとコウ君もわかっています。
「……来世でまた縁があったら、よろしく頼むわ……」
コウ君の作る世界というのに彼も絡んでいるだろうとカイン君はお見通しで、あえてお別れにそんな言葉を選びました。
それからしばらく経ってカイン君が亡くなるまでコウ君は看取り、没後に必要な諸手続きも引き受けました。カイン君は結婚しない自由な生活を選びましたから、それを頼む家族の当てがありませんでした。
自由を選んだというのも表向きの建前で、自分が結婚し子供を残すとお姉さんの相続に影響しそうであえて結婚を避けたというのが実際だったりします。自由だって悪いもんじゃないしそっちでいいや、というのがカイン君の人生の選択でした。
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