断罪竜の満悦

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断罪竜の満悦

「カイン・リークイッドが死んだ? そうか。冥福を祈ろう」 「……それだけ? パー様は淡泊だな」 「そうですよパー様、冷たくないですか?」 「……確かに一度はその名で呼んで良しと許可したが、このように悪用するなら撤回しようか」  王立軍の皆様がパー様と親しみを込めて呼んでいるので、せっかくだから私達もそう呼んでもいいですかとお願いしたら不承不承、了解いただけたのです。撤回されたら悲しいのでコウ君と私でそろって「ごめんなさい、もうしません」と頭を下げます。 「彼奴とは仕事上で多少関わりの合った程度。退役して何年も経ってそれ以来顔も見ていない。それくらいの訃報でいちいち悲嘆していたら身が持たないのだよ」  私達もすぐ慣れるし、慣れないなら苦労を重ねるだろうとパー様は言いますが、そんなものでしょうか。  最初にお会いして数十年。王都に寄った折にはパー様のもとへ顔を出していますが、いつお会いしても暮らしぶりは変わりません。私達が訪ねたからと言って読みかけの本から顔を離さず会話を続けることもしばしば。  王立軍におけるパー様の立場は顧問です。時には千里眼を用いて対抗勢力の情勢を盗み見て、軍部に助言することもあります。大陸軍のシーちゃんもそうですが、軍において神竜が在籍しているというのはそれだけで優位になるのです。  パー様の趣味の読書のために三大陸の方々から書籍を買い集めるのにかなりお金がかかりますが、必要経費として処理するのも決して高くはありません。  百年単位でこのような自堕落な暮らしを誰に咎められるでもなく漫喫出来る。パー様の太陽竜様への深い感謝も、この好待遇へ導いてくれたゆえなのでしょうね。
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