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そーちゃんが最初に目にとめたのは、亀の子どもを薄紙を張った丸い道具で掬う遊びでした。せっかくの希望なのに申し訳ないのですが、私達のような暮らしで生き物を持ち帰るのはさすがに無理でした。
底浅で大きな水色の水槽の隅っこにしゃがみ込んで何分も眺めているので、店主にすみませんと謝りましたが、元より見ているだけの客も多い業態だからちょっとくらいなら構わないよと言ってくださいました。寛容な店主さんで良かったです。
「おじさーん! おれたちみんな一回ずつね!」
そーちゃんと同じような年頃の、男の子ふたりと女の子ひとりの三人組が店主さんにお金を払い、子亀掬いを始めました。
「あーっ、さっちゃんのもう破れてるじゃーん」
「そんなぁ~」
そもそも薄紙で重量のある生き物を掬うというのは難易度が高いのでは? お子様でしたらなおさら。案の定、子供達は誰も亀を掬うことが出来ませんでした。
「まぁいいよ。楽しかったから」
「来年は一匹くらい掬いたいな~」
負け惜しみというわけでもなさそうな満足げな顔で、子供達は店主にまたねーと手を振り、去っていきます。その当時はまだ幼くてやらなかったけど、あの子達去年も見に来てくれたんだよと店主さんが話します。なるほど、そーちゃんへの対応も、今年はダメでも来年なら可能性があるからということなのかも。お上手です。
「そろそろ行きましょうか、そーちゃん……そーちゃん?」
そーちゃんはいつの間にか、水槽の亀を見ていませんでした。いつからだったのか、まだ近くを歩きながらお互いに何か話している先ほどの子供達の姿を一心に目で追っている様子です。
そーちゃんは立ち上がり、私と手を繋ぎます。ほんの一瞬だけ表情が寂しそうに見えたのは気のせいでしょうか。本当に刹那的な変化だったので確信が持てませんでした。
他には射的やパチンコ台などもありましたが、そーちゃんの身長ではまだ楽しめそうにありません。最終的に彼が選んだのは輪投げでした。
「どのおもちゃが欲しいんですか?」
そーちゃんは眉をきりっと上げて真剣な面持ちで、木工の船のおもちゃを指さします。木で作ったといっても白青黒の塗料できちんと塗り分けされていて、なかなか立派です。
小さな男の子ってなぜか、船のような大きな乗り物が好きでこうしたものに憧れを抱きますよねぇ。なぜでしょう? とコウに振ってみましたが、
「俺はそういうものに興味なかったから普通にわからん……何がそんなにいいんだろう」
そも、砂漠の真ん中の国に生まれたのですから、幼い頃に船に憧れを抱く機会などなかったのも頷けます。
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