愛しています

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「……わ……う、……うぅ~~」  他の何もかもを諦めて、ほんの小さな希望を目指し縋っても、それすら叶わない。コウが最期に嘆いた悲しみが今の自分にも重なって、私は身も世もなく泣きました。泣いたところで誰一人いない場所なのだから、堪える必要なんかないでしょう?  倒れ込んでも目線だけはどうにか、あの枯れ木のある方向へ向けていました。涙で滲んだ視界で、細い木の影から誰かが出てくるのが見えました。そのままこちらへ歩みを進めてくるのは……。 「……ツバサ、様……?」  私の目の前まで来てくれたのは、最後に見た姿から変わらないツバサ様……いいえ、髪の色だけは赤ではなく、まるでソウジュ様のような白髪に変わっていて……背中には白銀竜様の神器である長巻を背負い、腰には太陽竜様の神器である剣を提げています。 「……僕は……ソウジュだ」  はて……そんなことは、と思いましたが、良く考えたらありえないとも言い切れません。以前、人づてに……コウがグランティスの皆様に話したことを、ヒー君から……聞かせてもらった内容を、思い出しました。  太陽竜様の能力のひとつに、生き物の魂の操作があり。ゆえにクラニシア王は太陽竜様の体に己の魂を入れれば、太陽竜様に成り変われるなどと野心を抱いたのです。  ツバサ様は……ソウジュ様だけをひとりで死なせることに、心を痛めたのでしょう。だからせめて魂だけでもと、……神器を用いて。千里眼で遠い場所にいるソウジュ様を視て……その魂を自分の体に入れたのかもしれません。 「……あなたが、本当にソウジュ様ならば……お伝えしても、よろしいですか……?」  あらかじめそう断って、彼が頷いたのを見て、私は声を振り絞りました。 「ソウジュ、様……愛して、います」  いつも優しくて、繊細で、それでも懸命に努力される御姿。そんなあなたのお側で生きられて、私は幸せでした。  いつかお伝えしたいと思っていた私の本心。呑気な私はその時機も、ソウジュ様自身も失ってしまい、お伝えできなかったことが無念で堪りませんでした。
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