青の草原は神々の揺篭

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「もうすぐ崖っぷちですから気を付けて」 「はい……。……わぁ~……」 「驚きまして?」 「それはもちろん……驚きますよ」  私達は空の上にいました。小島ほどの大きさの地面がそのまま浮上して、空高くにあるみたいです。  私達の生まれ暮らした世界は、ひとつの大きな大陸でした。それが今、眼下に見下ろすのは、それぞれ形の異なる三つの陸地。大陸の中央にあったこの草原が百年前のあの日、浮上し、地上に残った陸地はひび割れ、徐々に分かたれてこのような立地になったのだと聞かされます。 「今日は雲一つない好天ですから高さがわかりにくいでしょうが、それなりの高さですのよ」 「そうみたいですねぇ……どうしてこのようになってしまったのでしょうか」 「それはこちらが聞きたいのですけど……埒があきませんから、わたくしの知っていることからお話ししてさしあげましょうか」 「わーい、お願いしまーす」 「緊張感のないこと……」  エルはその場……浮島の縁に座り、宙に足をぶらぶらと投げ出します。この高さでその行動はけっこう怖くないですか? 落ちそうで。 「怖くなどありませんわ。それよりももっと恐ろしいことがありますもの」  私の疑問に答えようというのか、エルはなんとその場から飛び降りました。 「わーっ!? ちょっと、エルー!?」  慌てて地面に伏して、崖っぷちに片手をかけてもう片手をエルに向かって差し出します。当然、間に合うはずもなく、そもそも間に合ったところで彼女は私の手を取らない予感がします。 「はぁーい、ごめんあそばせ」  下に向かって落ちたはずのエルが、すとんと軽やかな音を響かせて着地しました。まるで空から落ちてきたみたいです。 「エルの……天空竜様のお力ですか?」 「確証はないけれど、おそらくそうではありませんわ。あなたにも試していただけたら確信できましてよ?」 「えぇー……ちょっと怖いですけど」  みんなで落ちれば怖くない、じゃないですけど、エルが無事だったのを見て試してみるのも良いかと思ってしまいました。これってなんだか騙されやすい人みたいじゃないですか?  などと思案しつつも、思い切って飛び降ります。ほんの一瞬だけ浮遊感を感じましたが、気付けばエルの横に着地しています。あ、せっかくだから目を開けたまま飛び降りれば良かったかも。
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