姿は見えなくても、私達はいつも一緒です

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姿は見えなくても、私達はいつも一緒です

「やぁっと現れたわね、源泉竜め。待ちくたびれたわ」  お次に見えたのはグランティス王家、巨神竜様のシーちゃんです。わぁ、なんとも懐かしい。お元気そうな姿が見られて嬉しいです。 「とはいえ……新生精霊族ぅ? そういうのは別にお呼びじゃないっつーの! めんどくさぁっ!」  巨神竜様たる彼女はただ、神話時代にお預けのまま終わった源泉竜様との対決、再戦による決着を望んでいただけです。新しい精霊族が生み出され人間社会と対立し始めたことにより、自分だけの戦いに注力するのが難しくなりました。  リリアンスが生まれたのは第三大陸北部の大森林。グランティスは第三大陸を代表する大国ですので、精霊族がこれ以上勢力拡大しないよう、最前線となって足止めしなければならない立ち位置となってしまったのです。  こうして長きに渡る、第三大陸の内乱は幕を開けました。  私が目覚めますと、少し先に起きていたらしいエルは少し離れた場所で片足だけ地に着けてくるくると回転していました。 「何をそんなに回っているのですか?」 「退屈で退屈でたまりませんのよ。それで、イリサはどんな夢をみていらしたの?」 「夢というと、本来は私の脳内の記憶をもとに見るものだと思うのですが……私の知るはずのない、現在進行形の景色が見えたんです。エルはどうでしたか?」 「わたくしはそういった夢は見ませんでしたわ。予想通りですけど」 「予想出来たのですか?」 「ええ。あなたのその髪の色を見て、そういうことなのかしらと」  言われるまで、自分の髪の色などまったく……目覚めてから一度たりと、確認すらしていないことに思い至りませんでした。  当然、生前と変わらぬ黒い髪を頭に浮かべつつ、背中側に伸びている長髪に手を伸ばしたのですが。 「金色の髪に変わっていますね」 「それは夢幻竜の魔力の色。あなたはクエスの魔力と直に繋がっている……その証なのではないかしら」  夢幻竜様は、この世に在る全ての生き物の影と繋がっていて、その影の持ち主の視点と感情を知覚することが出来るのです。  その夢幻竜様……クエスと、私は繋がってしまったと。なにゆえそのようなことに……疑問が口をついて出そうになりましたが、はたと。エルに訊ねるより私自身の方がよほど、心当たりがありました。
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