過ぎた時代を垣間見て

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過ぎた時代を垣間見て

 何百年振りのことでしょう。私は目を覚ましました。  もし、私とクエスが繋がっているのだとしたら、この気持ちが彼に伝わってしまうかもしれなかったから。意図的に目覚めようとしてそれが叶った形です。 「そーちゃん……あおちゃん……」  双子の赤ちゃんを見ていたら懐かしくて、遠い昔を思い出してしまいました。浮かんだのは幸せな思い出ばかりだというのに、どうしてこんなに悲しいんでしょうね……どうしても何も、最終的にはそれが理不尽に失われたからに他なりません。我ながら白々しくって自嘲します。  せっかく起きたのだから久しぶりにエルとお話ししたいなと思って彼女の姿を探します。私の眠る定位置となっている、枯れ木の立つ丘から少し離れた場所で、彼女は仰向けに転がって空を眺めていました。  私に気が付くと彼女は体勢を変えないまま、お久しぶりですわねと挨拶してくれました。せっかくなので私もその隣で同じように横になってみます。 「あれは……なんでしょうか?」  薄紫色に暮れかかった空を、羽の生えた大きな爬虫類めいた生き物がゆったりと飛んでいきます。  私自身、薄々わかっていながら呟いたのですが、エルはなんでもないように「竜でしょうね」と簡素に答えます。 「この周辺に今でも竜などいたのですか?」 「グラスブルーには時の流れがありませんの。今見えているのは神話時代の風景なのかもしれませんわ。ささやかながら退屈しのぎになりましてよ」 「エルがここへ来て二百年ほどになりますよね……」 「体感では二百年とは感じていないみたいですわ。そうでなければ気が触れてしまいそうではなくて?」  この場所に時の流れがないから、私達の精神も時の経過を感じていないのでしょうか。ありがたい作用ではありますが、それでも退屈には違いないのでは。下手につついて現状の不満を述べていない彼女から藪蛇を出してしまう結果になっては良くないので黙っておくことにしました。
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