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「その人が泣いてる理由って、わかるのかな」
「だいじな、ひとが……いなくなっちゃう、から。どんなにがんばっても、だめ、だったから……おれ、も」
「コウも?」
「ユウにいも……フウ、も。いなくなっちゃう……しんじゃうきが、する」
幼いコウ君には理解不能だと思いますが、その夢はまるで予言めいていました。ユーリは二十歳になれば私達と同じように体を失いますし、フウ君も同じ年で神罰を受けるのでしょう。それはどんなに頑張っても避けられない運命です……。
「……コウ。その夢はたぶん、夢じゃなくて本当になるんだ。少なくとも、オレの方は確実に」
「え……?」
ユーリは真実を伝えるべきか逡巡したようですが、よくよく考えた末に話すことにしたようです。
「オレはもうすぐ、この家に……ふたりの側にもいられなくなる。オレがいなくなったら、フウを助けて欲しい。コウにしか出来ないことなんだ。コウは、フウの兄ちゃんなんだから……」
いたって真剣な眼差しで、コウ君の涙に濡れた幼い目を見つめながら、語り聞かせました。コウ君が全てを理解するのは無理でしたが、幼いなりに精いっぱい考えて。握った手の甲でごしごしと目を拭いました。
コウ君は不安を抱えながらも、その日以来、人前でいたずらに泣くことはなくなりました。それ以外の生活は何ら変わりなかったのですが。友達も作らず、自宅の二階の窓からアルディア村の道を行き交う人々を眺めるだけ。友達と遊ぶフウ君を見ても羨ましいとも感じない、諦観に満ちたうつろな胸の内……。
なんでしょう、悲しみという感情に支配されていた頃よりも、その後の方がよほど気の毒になったように感じてしまうのは……。私の見方が穿ち過ぎなのでしょうか?
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