ふたりで作る世界

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 二十歳になったら自分と、君の探してる「コウ」はひとつの体の同一存在になる。ということは別の人と言い切れないのでは? コウ君は首を捻りましたが、この時点でのそーちゃんには理解出来ないと判断し、黙っておくことにしました。  一方的に言う事を聞いてもらうのは諦めて、コウ君はとりあえず自分から先に座ります。名前を知って少し警戒心が薄れたのか、そーちゃんは素直にコウ君の横に座りました。 「これから話すこと、今すぐ全部理解するのは無理だと思う……でももう少し大人になったらわかるはずだから、聞いて欲しいんだ。君の探してる『コウ』って人のためにも」 「コウのため?」 「その人はたぶん、君を……ソウもだけど、他にも大事な人達がいて……そういう人達を失わなくて済む世界が欲しかったんだ」 「コウのだいじなひとたち、しってる。ソウのおとうさんと、おかあさんと、おとうと。おとうさんのおにいさん。それと……」  その後に続いたそーちゃんの言葉。至極当然のようにさらりと言うので、私はひとりで動揺してしまいました。 「サクラのこと、だいすきだったよ」 「……恋人? 本人がそう言った?」 「ちがうけど、みてたらわかる。だからコウをみつけて、いっしょにサクラのところへかえらなきゃっておもって……でも、それはもうできないって、ことなんだよね」  そーちゃんは項垂れてしまいました。コウ君は否定しません。私がこうして見ていることまでは知らないのでしょう。 「まだわからないよ。もしコウが、そのサクラって人をつかまえていたら、また会えるかもしれない。そのための世界をおれ達で作るんだ」 「せかい……つくる?」 「君も手伝ってくれないかな。……けっこう大変そうだから、絶対とは頼めないけど」  そーちゃんはしばし、真剣な顔で考え込んでいました。そもそも「作る」という概念からしてよくわかっていないのです。砂場でお城を作るとか、食材を使ってお料理に作り変えるとか、そういった記憶を思い出しつつ思案します。 「よくわかんないけど、それがコウのほしいものなら、てつだう。サクラにもあえるかもしれないんだよね?」  あくまで可能性でしかないんだよ? とコウ君が念押しすると、それでもいいよとそーちゃんは頷きました。 「ふたりで作ろう。もう誰も、何ひとつ失くさなくて済む世界を」 「うん」  コウ君は立ち上がり、手を差し出します。そーちゃんはその手に、小さな手を重ねました。  コウ君とそーちゃんと、……私と、彼らを包む暗闇と静かな風の流れだけしか知らない、決意と約束。この時はまだ誰も、その選択が誤った道なのかもしれないと、気付いていませんでした。
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