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 いったいどうやったら、弟はもとの姿に戻ってくれるのか。 「あんたはどう思ってんの」  わっかんない。  多幸感に包まれ、ふわふわした幸哉の声に、私は苛々させられる。 「幸哉、そのまんまじゃまずいでしょう。一生そのままでいる気なの」  ――まともに死ねるかも、わからないんだから。  あえて出かかったその言葉は呑みこんだ。  私が言葉を濁すと、幸哉はえへへと笑う。笑いながら足を折り、あっという間にうたた寝をはじめた。  たとえば、と私はうたた寝をする幸哉を前に思う。  人間だったなら、のどを掻き切れば死ぬだろう。  牛だったなら、のどを掻き切れば死ぬだろう。  しかしいまの幸哉は、人間でも牛でもない。  食事を摂らず、排泄もしない。  たまに歌い出し、口を半開きにしてテレビを眺め、かけ算九九をそらんじ、呆けたかと思えばなにやらご満悦な顔をする。  私の弟は、いまはそれだけだ。  幸哉が大丈夫でないことくらい、とうにわかっていた。  話しかければこたえるが、どうにもねじが緩んでしまっていて、幸哉には危機感がない。  天罰覿面。  いったい弟は、まっとうな死を迎えられるのか。
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