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世界、救おうか
「うわあああああ~~! やっちまった! 私とした事が学校休むだなんて!」
次の日。
普通に登校してきたありすが、本当に悔しそうな表情を浮かべながら叫んだ。
自分の居ない間に何か楽しい事が起こったかも知れない、とひたすら嘆くありす。
学校には遊びに来ていると以前宣言した事も有り、そのショックは計り知れない。
「もうおしめぇだあああああ~~! 絶望感じるぅううう~~!」
「うるさいわね!?」
「ありすさん……本当に風邪引いてたんですか……!?」
「一日で治るって……信じられない回復力だよな」
「まぁね。私、ゲームでもステ回復力に極振りすっから。五千食らったら五千一回復するプレイスタイル」
「どういう縛りだ……!?」
夏音が軽くイジると、ありすは思い付いたように両手を打ち合わせた。
「あ、じゃあさ。今日は皆で家ゲーしようよ! 学校終わったらユリの家に集合ね! 私、家からゲーム持ってくからさ!」
「ちょっと、ありす!?」
ユリ達に拒否権すら与えず、ありすは「はい決定!」と可決してしまう。
こうなれば、もう乗るしかない。
「アタシは良いぜ、暇だし」
「私も、今日は委員会の仕事は無いので」
少々強引なのだが。
ありす主催のイベントは毎回、参加して良かったと思うぐらい楽しい。
だから不思議である。
「……分かったわよ。私は、部の予算について少し話してから帰るから。先に三人で始めてて」
結局、ユリも承諾した。
そして、あっという間に一日が終わって、放課後。
いつもより浮き足立った様子の三人を校門で見送り、一人部室へと向かったユリ。
そんな彼女からも、自然と笑みが溢れていた。
「少し、遅くなったかしら?」
帰りにお菓子とジュースを買って、ユリは自分の家に帰宅した。
「ただいま。皆、遅くなって……」
「ルーちゃん! 魔法まだ!?」
「今詠唱中です! 三時方向から敵の増援来てます!」
「そっちはアタシが向かってる! って、うわ! バフ切れた!」
「あ、ヤバいぃ! この敵無駄に硬い!」
「デバフ無効化なんてアリですか!?」
ゲームオーバー。
各々のゲームタブレットに浮かぶ血文字。
意気消沈した様子のありす達。
「め、滅茶苦茶落ち込んでるわね……」
「あ、ユリ。お帰り……」
ありすが暗い顔でユリの方を見た。
「お邪魔してます、ユリさん。そしてすいません、世界を救う事が出来ませんでした……」
「感情移入が凄い!」
「よおユリ……。アタシを笑ってくれよ、西地区の人達すら救えない無力なアタシを笑ってくれよ……。道具屋の娘さん、結婚したばかりだったんだぜ……?」
「向こうの住人になってる!」
三人はグデッと床やらソファーやらに寝転がった。
何というか、もう怖い。
「ちょっと皆! 諦めないで、ほら! お菓子食べて元気出して! もう一回挑戦しましょうよ、ね?」
ユリが袋を逆さまにしてお菓子をテーブルに広げた。
「……私、醤油味のお煎餅が食べたい」
「買ってあるわよ」
「私は酢昆布が良いです……」
「勿論あるわ」
「アタシ、黒飴……」
「ちゃんと用意してるわよ。……っていうか、おばあちゃんか! お菓子の趣味皆おばあちゃんか!」
そんなユリの冴え渡るツッコミが、ありす達を一度現実に引き戻した。
各々、好きなお菓子を食べて一息入れる。
「いや~~ユリが来てくれて本当に良かったよ」
「そうですね。丁度前衛が足りなかった所なので」
「これ本来四人でやるモノだからな」
「話がもうゲームの事にシフトしてる!?」
「ユリは前衛ね。キャラメイクは終わってるから。刀が得意なド変態女剣士だよ」
そう言ってありすがゲームタブレットをユリに手渡してきた。
「へぇ~~。刀が得意なド変態女剣士ね……って、おい!?」
「さ、始めよ」
「いや、ちょっ、待ちなさいよ! 操作方法どころか、何のゲームやるのかすら知らないのよ!?」
「プレイしながら教えた方が合理的です」
「瑠々まで!?」
普段ゲームをやらないユリにとっては中々、高いハードルである。
「プレイヤーは最大四人。それぞれ職業とキャラの特性を選んで、協力して魔族軍を倒すアクション型のRPGだ。アタシが拳闘士、ありすが召喚士、瑠々は魔法士でプレイしている」
「キャッチコピーは、織り成す快感ストリングバトルだよ!」
「……? ??」
「操作方法は滅茶苦茶簡単です。移動は左スティック、押し込んでダッシュ、ガードL2、道具R1、魔法Bボタン、特殊技Cボタン、強攻撃Aボタン、ジャンプDボタン、ストリングゲージMAXの状態でA+B or Cボタン同時押しで奥義技。以上です」
「え? え? え? 道具のボタンどこ!? ストリングゲージって何!?」
「質問は一切受け付けません」
「何でよ!?」
「皆ゲージ管理慎重にね! あ、ユリは問題無し。キャラ特性の変態が有るから、ダメージを受けたり与えたりすると勝手に増えるから」
「変態は初心者向けだ、安心しろユリ」
「色んな意味でレベル高いわ!」
そうこう言っている間にゲームタブレットの画面はマッチングに移行しており。
自分の操作キャラクターが出現する。
「は、始まっちゃったじゃない! このキャラ特性何か嫌なんだけど! 変更してよ!」
「駄目だ。今変更するとパーティの戦力バランスに甚大な影響が出る」
「私達の為に変態になって、ユリ!」
「ゲームの話よね!? っていうか変態ってそこまで重要なの!?」
「さぁリベンジです! ブランクさんとジャックさんの敵討ちですよ!」
「誰っ!?」
ありす達は熱中した。
開始一時間でゲーム慣れしていなかったユリが突如として覚醒。
最前衛に相応しい活躍を見せ、キャラを完璧に使いこなし、次々に強敵を屠っていく。
「ありす、砦の耐久値減ってる、左手後方、防衛。瑠々、夏音の回復の後、敵ガーディアンにディスペル。夏音はバフ入れ直して、ゲージチェック忘れずに」
「「OKユリ!」」
「OKですユリさん!」
「各自、持ち場を制圧後、回復。砦被害率10%以下なら敵陣営を一気に叩くわ!」
「チェック入りました。全て作戦通りです」
「よし。それじゃあ皆……この領地も、落とすわよ!」
その後。
ユリはゲームにどハマりする事になった。
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