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「二度とクラウディオ様に殺されたくないわ……。とても怖かったんだから!」
「それは僕も同じ気持ちだよ。殺されたい人間なんていない」
ふざけていたお兄様だけど、今は神妙な面持ちでなにか考えている。
「僕たちにチャンスは与えられた。それはいい。けどさ、運命を変えるって、相当難しい気がするな」
「そうかしら? だって、私たちはなにが起きるかわかってるのよ。同じことをしなけれないいのよ」
「じゃあさ、聞くけど。大国バルレリアがレティツィアをクラウディオの婚約者にって、また申し込んできたらどうなる? 人間の数より牛と羊の数のほうが多いようなルヴェロナ王国が断れると思う?」
「そ、それは……」
お兄様の言うことはもっともだ。
小国は大国に振り回される運命にある。ルヴェロナ王国はバルレリア王国と過去に姻戚関係があり、それを理由になんとか他国から侵略されずに済んでいるのだ。
「たまたま、ルヴェロナ王国の王女に美人がいて、先々代よりももうひとつ前の代にバルレリア王の妃になったから、今も親戚扱いしてもらえているけど……いや、遠い親戚か」
私に美人な王女の面影がないのが悲しい。
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