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お兄様は駄々をこねたけど、七歳の姿だけあって、それが演技に見えない。
「あー。絶対に僕は出ないぞ。出ないったら出ない」
「ヴィルフレード様、お待ちくださいっ! 陛下たちにご相談して参りますっ!」
乳母は慌てふためき、部屋から出ていった。
どうして、乳母があんなに慌てているのかというと、私たちのお披露目は国内だけにとどまらず、各国から国王夫妻や貴族たちが招待される言わば、ルヴェロナ王国の外交一大イベント!
牛や羊がのどかに道を歩いても違和感のない田舎の小国、ルヴェロナ王国。
そんな我が国にとって、国王陛下の結婚式以来、世界各国から注目してもらえる滅多とないチャンス。
ここで、お祝いが中止になれば、招待客はなんのためにこんな田舎へやってきたのだと大騒ぎになるだろう。
お土産として用意された特産の蜂蜜やルヴェロナ羊(他の羊の毛より手触りがいい)の毛糸、リンゴ酒程度じゃ許されない。
「こっ、こらー! ヴィルフレード! ドレスが着たいとは何事だっ!」
乳母から話を聞いたお父様が廊下をドタバタと走り、王冠が落ちそうになりながら、慌てて子供部屋にやってきた。
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