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恐怖で足が震え、その場から一歩も動けなくなった私を一片の温もりもない冷たい眼差しで見下ろしている。
今すぐにでも私を殺してしまいたい、そんな声が聞こえてくるようだった。
「一度も? 嘘をつくな。お前は俺を何度も裏切った」
「え……?」
「兄のヴィルフレードとともにアルドを庇い、今の今まで俺よりも、あの下賎な弟の味方だった」
アルドというのはクラウディオ様の腹違いの弟で、おとなしく穏やかな気性をしていて、私たち兄妹と仲が良かった。
親しくしていたのは認める。だからといって、クラウディオ様を一度も裏切ったことはない。
「アルドは……アルド様は私たちのお友達です。それにアルド様は第二王子で、クラウディオ様と立場が違います。だから、その……」
「ああ、それで。気難しい婚約者の俺ではなく、おとなしく御しやすいアルドを王にしてやろう考えたわけか。とんだ野心を持っていたものだ」
クラウディオ様にとって、異母弟のアルドが疎ましい存在であることは知っていた。知っていたけど、アルドは私たち兄妹と昔から仲良くしていて、お互いを呼び捨てにするくらいの仲なのだ。
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