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婚約者に決まったからといって、アルドに突然冷たくするほうがおかしい。
「私たちに野心なんてありません。 第一王子であるクラウディオ様を差し置いてアルドを王にしようなんて考えたことは一度もございません。誤解です。私たちはなにもっ……」
「ヴィルフレードも同じことを言っていたな。だが、身の潔白を証明できなかった。結局、あいつも俺の敵だ。裏ではアルドと繋がり、俺を引きずり落とそうとしていたのだからな」
唇をぎゅっと噛んだ。何度言ってもクラウディオ様の心に私の言葉は届かない。
今だけじゃない。一度も私の言葉なんて聞いてくれたことがなかった。
悲しさと悔しさで目から大粒の涙がこぼれ、乾いた土の上に落ちた。
婚約者なんて名前だけ。いつも私のことを見下し、話をしても鼻先で笑い飛ばし、流行遅れだ、田舎くさいと言っては貶した。
馬鹿にしていた私を婚約者に指名したのは、私たちが自分を裏切っているかもしれないと疑ったからなのだろうか。
それなら、納得できる。
ルヴェロナ王国と私たちの動きを監視するためだとするならば、私のことを愛していないのも当然のこと。
「お兄様は……どこ……?」
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