ヤマの旅

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 街の人に「銀行」というシステムを教えてもらったので、お金を預け、貯金をし、クレジットカードをもらったことで、飛躍的に行動範囲が広がりました。    歩きだけだったのが、馬に乗り、車にのり、電車に乗り、飛行機をつかい、国々を飛び回りました。  飛び回っているうちに、多くのことを知りました。  「仕事」のことや、貨幣のことや外国為替のことや、犯罪や天災、事故など、社会というものを知っていくようになりました。  社会のことを知っていくとともに、自分のことも分かるようになってきました。  段々と、自分の持っていた違和感が形作られていきました。  自分を《捨てた》という親に対する憎しみ、  騙していた村人たちの、不誠実さ、  そういったものを感じるようになってきました。  ルーツのない自分なんて、生まれてこないほうがよかった、とも、思えました。  何度も自殺を図りましたが、うまくいきませんでした。  二十歳を過ぎた頃、映画を見ていたヤマは役者になろうと決めました。  自分以外の何者かになることによって、自分の中の「穴」が埋められるような気がしたからです。
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