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その試みは、うまくいきました。
楽団に入り、演劇をしている間は自分の中の嫌なものを忘れることができたのです。
いつか映画に出たい。
そんな夢を描きながら、毎日を過ごしていました。
ところが、どのオーディションにも受かりませんでした。
貯金もつき、外国為替相場を信用という概念を使って取引する試みも失敗し、多額の借金を抱えてしまいました。
楽団からも追い出され、
職を失ってしまいました。
ときどき、「村」のことを思い出しました。
いいことも、悪いことも、
憎しみや嫌悪感は消えないけれど、どうしても、村のことを忘れることができませんでした。
友達や、育ててくれた大人たち、
森や、動物たち、畑や、田んぼ。
自分が見てきた、新しく生まれた赤ん坊たちが大きくなっていく時間。
気持ちはぐちゃぐちゃでした。
いいのかわるいのかもわからない。
生きていていいのか、死にたいのかもわからない。
何もかもが分からなくなってしまいました。
嬉しいのか、悲しいのかも分からない。
何を思ったらいいのかも分からない。
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