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それでも、村のことを思い出すと、どうしても涙が止まりませんでした。
どうして、泣いているのか、分かりません。
でも、涙が溢れてきてしまうのです。
何も考えずに、ヤマは歩き出しました。
お金がないので、歩くしかありません。
街では食にありつけないので、山や森を伝って村へと向かいました。
なぜ自分がそんなことをしているのかも分かっていませんでした。
どれくらいの時間が経ったのか分かりません。
ぼやけた視界のなかで、少しずつ、見慣れた風景になっていき、
ようやくヤマは村にたどり着きました。
村人たちは、自分が何で捨てられたのかなんて、知りはしない。
でも、自分を拾って、育ててきたのには理由があるはずだ。
親を見つけることは出来なかったけれど、絶対に村人たちから「理由」を聞き出してやる。
世界はこんなにも広かった。
そして自分は無知だった。
無知だから、騙されてきたのだ。
全部、聞き出して、化けの皮をはいでやる!
そう意気込んできたヤマは、
村を前にして立ち止まってしまった。
村が、なかったからだ。
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