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「ちょっと! 篝火先輩! 何考えてるんですか!」
僕は必死に抗議を試みるも篝火先輩はまるで無視して建物の中に入っていく。やばい、貞操の危機だ。僕は自分の身を案じる。
僕は今まで付き合ってきた女性ともお互いの家を往復していたので、こんなところになんて来たこともないのに、目の前の使えない先輩は慣れた手つきでタッチパネルを操作して部屋を確保している。
「行くぞ、涼」
涼⁉ いつも優紀と呼ぶくせに突然の馴れ馴れしさは何!?
僕は混乱のあまり抵抗する力を入れるのも忘れて部屋に押し込められてしまった。やばい。やばい。やばい。冷や汗をかいているのが自分でもわかって。
篝火先輩が強引に僕をベッドに縫い留める。
「か、篝火せんぱ……?」
するとすぐに口付けが飛んできて、逃げ惑う僕の舌を無理やり絡めとって。
口腔内を蹂躙するように、舌を嬲られ、上顎をねっとりと舐め上げられて、その疼くような口付けに、不覚にも下半身が反応してしまっていた。
「なぁ、涼」
「な、ですか……」
僕は少しだけ涙目になりながら篝火先輩を見つめた。
口付けの余韻で、反応しかけている下腹の熱を隠すように足をもじもじさせてみるけれど、しっかり勃ち上がりかけているそれが恥ずかしくて。
「男同士ってどうやるんだ?」
は? コイツはバカなのか? いや、きっとバカなんだろうけど。
バカじゃなかったら男をラブホテルに連れ込まないだろう。
「そんなの僕だって知りませんよっ!」
僕が叫ぶ様にそう言うと「めっちゃ勃ってるんだけどこれすぐ挿れていいの?」などと宣ってくる。
「だから知らないって言ってるじゃないですか! 傷つけるのだけはやめてくださいよ!」
すると篝火先輩が僕の上に乗っかったままスマートフォンを取り出した。
嫌な予感しかしないんですけど!?
篝火先輩がスマートフォンを何やらタップしてはスワイプして「ほうほう、ふむふむ」などと怪しげな感嘆を漏らす。コイツ、絶対今調べてるよ……間違いない……僕は悲壮感を漂わせながら篝火先輩を見つめた。
「わかった!」
「わかったって何がですか!」
絶望にも似た感情に支配された。
やばい、本当に貞操の危機だ。
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