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す、とベスの水の壁が揺れ、恐ろしいスピードで水の刃が火トカゲを貫いた。
観衆の視線が戻った瞬間、すでにリアの目の前に、蹴りを出すベスの姿がある。
「……!」
飛んでくるベスの左脚を、炎で覆った右腕で受けながら、リアの視線がちらりと動く。
その瞬間、ベスの軸足を黒犬が襲う。黒犬の牙に捕らえられる直前、ベスの身体は初めの位置まで飛びのいている。
ベスの身体が戻り切る前に、背後から炎の塊が襲う。しかしそれは、ベスの背中の水壁によって相殺される。
間髪入れず喉元を狙う黒犬の脇腹に、ベスのこぶしが入る。土の魔力をまとわせたそれに、黒犬の姿は霧散する。
ベスの足が地面についた瞬間、土の鎖が伸び、リアの両足が捕らえられる。わずかに動きが鈍ったリアの首に、炎の防御壁を突き抜けたベスの手刀が叩き込まれる。
ギイン、と耳をつんざく振動が響いた。
ベスの手刀は、リアの首に入る直前で止まっている。
寸止めか、と誰もが思ったが、ベスの表情は歪んでいた。
突然リアの頭上に、不気味な黒い球体が現れる。
それはゆっくりと、動かない二人を覆い隠していく。
リアの目はがふと動くと、ベスの身体がのけぞり、水の壁と土の鎖が四散する。ベスは仰向けに倒れ、動かない。
「それまで」
校長の声が響く。
何が起こったのかわからず、見物人たちは息を飲む。
「リア・アストラの勝利」
会場は静まり返っている。リアは、地面に倒れこんだベスを助け起こす。ゆっくりとベスの目の焦点が、親友に向けられる。
「ベス、ごめんね、大丈夫」
ふいに瞬きをして、ベスはつぶやく。
「……すごいわ、今のは何」
「光の精霊……光獣だ」
ケイン教官がつぶやく。これまで、授業でも模擬戦でも一度も、リアはこの式獣を出したことはなかった。
「……光を曲げて、時間を止めていた」
鳥肌が止まらず、思わず立ち上がり拍手をする。
続いて、会場は拍手と歓声に包まれた。
卒業試験の決勝戦は、リア・アストラの勝利で幕を閉じた。
「賭けに、負けちゃったわ」
ベスはぽつりとつぶやく。
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