傀儡の王

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* 「お前、どうしてリアに告白したんだ」  麦の蒸留酒を一口含んでから、低い声でカイトはナギに尋ねた。  ナギの書斎には、月あかりが斜めに差し込んでいる。口を引き結んだナギの硬質な横顔を、まだらな銀の光が照らしだす。 「黙って去るのとどちらが良かったというんだ」  いつもの静かな声で、ナギは答える。 「私が彼女に与えられるものは、すべて与えた」  カイトの目に、どこか必死にリアに愛をささやくナギの姿が浮かんだ。 「勝手だな」  カイトは息をつく。 「さっきの話、嘘なんだろ」  ナギの眉がピクリと震えた。 「どうせ勝手を言うなら、ついて来てくれって言ってやれよ。分かってるんだろ。あの子が、どうして魔術師になったのか」 「……それは、できない」 「それならどうして、あの夜、あの子に呪いを解いてくれと言ったんだ」  初めの日、あの子を、無理やりにでも追い返せばよかった。カイトはつぶやく。 「あの時は、それが私の希望のすべてだった。彼女の浄化の炎は、特別なものだ。呪いを解いても、侵された体はそのまま残る。だが、彼女の炎は違う。再生の炎だ。あの夜怨霊に侵されたお前が今こうして無事でいるのも、そのためだ」  ナギの瞳が閉じられる。 「……だが、そう、勝手だな。私は今、彼女に、何としても生きてほしい」  再び開いた瞳には、強い光があった。 「私の体の中では、今も腐食の呪いは進んでいる。傀儡の王を倒さなければ、私はもう長くない。宿願を果たすのは次代に託すつもりだったが、今の私は、万に一つの可能性に賭ける」  瑠璃色の燃え上がる瞳が、カイトをまっすぐに見据える。 「カイト。君に今日の会合に加わってもらったのは、彼女を支えてほしいからだ。もし私が死ねば、ユシュツカ家で傀儡(くぐつ)の王について知るものは、一人もいなくなる。記憶を継ぐ者が必要なのだ」 「まさか」  カイトの目が見開いた。 「彼女と、……彼女の子供を、支えてほしい」
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