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機銃掃射のように水の矢が傀儡の王に降り注ぐ。
目を開けたリアとナギの視線が絡んだ。
瞬間、ナギの身体を炎獣の浄化の炎が包む。
ナギは目を見開きわずかにかがみこみ、やがてゆっくりと顔を上げた。
亜空間内に炎が吹きすさび、支配領域の壁は籠のように炎の糸で覆われていく。
すべての棘が霧消する。
ナギの右手は開かれ、頭上に突き上げられている。
彼の瞳のような瑠璃色の輝きが、徐々に赤い炎を染めていく。
圧迫感に、傀儡の王も、リアもベスも縫い留められ身じろぎすらできない。
(これが、ナギの魔力)
ふいにナギの右手が握られ、瑠璃色の炎の籠は、傀儡の王ごと押し潰れた。
*
「リア」
ぼんやりとリアは目を開いた。焦点が合うと、そこには瑠璃色の瞳がある。その瞳は、痛々しいほどに歪んでいる。
「ナギ」
微かな声に、ナギの震える手が頬に触れた。
「もう、置いていかないで」
「……すまない」
ナギの涙が、リアの頬を濡らす。
「お兄様。触ってはだめよ」
静かにベスが引き留める。
「力が戻ったばかりで加減ができないでしょう。大丈夫、リアに深い傷はないわ」
リアは静かに目を閉じた。
*
「それにしても本当に、男の人っていうのは」
リアの傷にゆっくりと治癒魔法をかけながら、ベスはプンスカ怒っている。
「すまない。君たちは、……よく似ているものだから」
傀儡の王の手元にあったのは、ベスの姉、マーガレットの傀儡だった。
ナギから見ると、アニサカ家の姉妹はほとんど生き写しだ。傀儡の王が間違えるのも無理はない。
「こんな屈辱はないわ。全く、あのまま結婚しなくてよかった」
まんざら冗談でもなさそうな響きに、思わずナギは首をすくめた。
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