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中島みゆき
遊びです。ちょっとイメージを。
終電間際の人もまばらな電車内で、イヤホンで中島みゆきの曲を聴いてみる。ここでは選曲が重要で、「時代」や「糸」のような一般受けする曲や、「旅人のうた」みたいに勇ましい曲は除きます。
後述するようなクセ強めの曲が良いです。
そして曲を聴きながらまわりを見回すと、不思議なことに…。そこらにいる乗客たちが、みんな "ワケあり" に見えるのです…!
ただのバイトのお兄ちゃんが、夢破れて故郷へ帰る青年に見えてくる。
ただの仕事帰りのOLが、不倫相手を刺殺して放心状態で電車に飛び乗ったホステスに見えてくる。
ただの酔っ払いのおっちゃんが、経営が行き詰まり銀行に融資も断られて酒に溺れた工場長に見えてくる。
中島みゆきの魅力はそういうとこです(どこ)
「この世に二人だけ」
「異国」
「ホームにて」
「歌姫」
「泣きたい夜に」
「海よ」
「ファイト!」
「夜曲」
「狼になりたい」
「エレーン」
「蕎麦屋」
「時は流れて」
「シーサイド・コーポラス」
「怜子」
デビュー曲「アザミ嬢のララバイ」を、まだハタチそこそこで作ったというのだから、歌詞の内容を見てみても、信じられないんです。
そしてエレーンなどが入っている「生きていてもいいですか」という7つ目のアルバム、これも発表時はまだ二十代ですが、人間の本質をえぐるような内容で、すごいなぁと思いますね。
ちなみに「ルージュ」って曲は、ちあきなおみに提供した歌です。ハスキーボイスによく合い、「喝采」や「黄昏のビギン」に並ぶ名曲だと思います。海外ではフェイ・ウォンがカバーしてるのですが…このフェイ・ウォンver.も素晴らしいです。この人はオシャレな感じもあるけど、テレサ・テンみたいな旅情的で人間臭い面も持っていて、好きな歌い手の一人ですね。
それから名曲「ファイト!」の何が良いって、歌い方だと思います。うまいとか下手とかじゃなく、声質の良し悪しでもなく、シンプルに "心がこもっている" ってこと。だんだんと力強い歌い方になって、頑張ろうって思えるのに涙も出るのだから、自分の感情の有り様を見失う心地にすらなります。
一番好きなのは「ホームにて」ですね。手嶌葵や魚高ミチル、半崎美子、冨田麗香などがカバーしていて、みんな歌唱力のすごい人たちですけど、さすが、歌のうまさなんかこの曲に求められていないことをよく分かって歌ってる。この曲を好きになってカバーしようと思った歌い手は、この曲を好きになってカバーしようと思った時点で、みんな好きです。
中島みゆきにしか作れない世界は、本当は、誰の心の中にもある厄介な「しこり」のようなものを描いているんだと思います。
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