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台所の照明をつけて、買い物してきたものを一緒に整理整頓して、クリームシチューの材料と食材を並べてから、いざ、料理を始めようと羽月は持参してきた可愛い花柄のエプロンに着替えると、羽月は浩二の視線に気づいた。
「どうしたの?」
羽月は浩二が好気的な、妙な視線を感じて浩二に言った。
「いや、なんだか新妻みたいだなって」
「バカっ」
浩二の言葉に羽月は照れて一言で言葉を返した。
「本当、こんな時にどうしようのない変態、むっつりよねっ」
「うるさいわい」
冗談交じりに会話をすると、少し、気分が晴れるようだった。
「妹さんもいるんだから、今日は何もしないからね」
羽月が念押しすると、浩二はちょっと寂しそうな表情に変わった。
「そっか、それは仕方ないか……」
「そんなに落ち込まないでよ……、ほらっ」
そう言って、羽月は顔を上げて、軽くつま先を伸ばすと優しくキスをした。
「「う、うぅ、ちゅ……」」
唇が重なって、どちらともなく唇を押し付け合う。
そっと浩二の手が羽月の腰の方に回って身体を引き寄せる。
「ううぅ……、うん、いい……、ちゅっ、うう……、もっとっ……」
「うん、っちゅ、ちゅっっ……、ちゅっっ……」
優しいキスから次第に大胆さを増し、その場で何度も唇を重ねあって、舌を伸ばしてお互いの唾液で口の中までべたべたになりながら、頭の中までも快楽で満たされるような時間が続いた。
自分たちでも信じられないくらいに、背徳的で、艶めかしい行為。
一度、始めると止められないほどの快楽で、不安を消し去るように二人は触れ合う時を止められず求め合った。
そうして二人が快楽を求めあっていると、玄関の方から人が入ってくる音が聞こえた。
瞬間、焦るように状況を確認する。
一体、誰だろうと思いながら、唇を離し、服が脱げたり、着崩れしていないことにひとまず安堵した。
意識が覚醒するには時間がかかり、まだ抱き合ったままの姿勢のままで、玄関の方から入ってきた人物と目が合った。
「あれ……、こ、こうじ……、それに羽月さんも……」
玄関から台所の方までやってきたのは唯花で、唯花は想定外にも思わぬ現場に遭遇し、アタフタと動揺してしまったようで上手くすぐに言葉が出てこなかった。
浩二からも羽月からも、二人が付き合っていることは聞いていて、時の噂でも二人がいい雰囲気で一緒にいる姿を見かけたという話も聞いていた。
だから、直接触れ合っている姿を目撃する事態も予測はできた。
それでも、服は脱げていないまでも、こうまじまじと二人で破廉恥な行為をしている現場を目撃すると、唯花もどうしていいか分からなかった。
「(今、確かにキスしてたよね……)」
唯花はそれをこの目で見たが、それでも信じたくはなかった。
でも二人にそれを聞くことが出来なくて、言葉がうまく出てこなかった。
「肉じゃが、たくさん作ったからおすそ分けしようと思ったけど、お邪魔だったみたいだね……、私、やっぱり帰るね」
落胆したように聞こえる声色で唯花は言葉をこぼした。
羽月の料理を作ろうとする姿を見て、自分の持ってきたものが必要ないものであると即座に分かった。
自分だって、二人に嫌われたいわけではない、そんな感情が頭の中に渦巻いた。
何か言わなければ、ここにいるべきではない、唯花はそんな風に思っているかもしれない。
そう二人は思ったが、気まずい空気に耐えられず唯花はこの場を離れようと言葉を残して踵を返すと、肉じゃがの入った鍋を持ったまま立ち去ろうとした。
「唯花さん!!」「唯花!!」
悲しみの表情に歪ませたままその場を立ち去ろうとする唯花に二人は声を掛けようとしたが、その声は届くことなく、唯花は玄関を出て、扉が閉まる音だけが大きく家中に響き渡った。
「唯花さん……」
羽月も浩二もあまりの事に脱力して、手を離した。
自分たちが間違っているのか、そんな自責の念が感情を支配しようとする。
唯花に遠慮してほしくない、傷ついてほしくはないと思いながらも、自分たちが始めてしまった恋愛関係を止めることは今更できないことは口にして言うまでもなかった。
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