第一章「思い出の中の二人」

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第一章「思い出の中の二人」

 ―――西暦2058年秋  八重塚羽月(やえづかはづき)樋坂浩二(ひさかこうじ)、高校二年生。 「はぁ……、二学期早々、なんてことになってるのよ……」  高校二年生の二学期、私、八重塚羽月(やえづかはづき)は二学期早々、大変な問題に直面していた。 「あの生徒会長め、こんな時に引越なんてしなくてもいいじゃない! 全部私が残った仕事の尻拭いして、引き継ぎやって、学園祭や体育祭の運営しなきゃならないなんて、引っ越すならもっと早く伝えてくれればいいのに、もーーーっ!!!!!」  私は誰もいない事をいいことに生徒会室で一人愚痴っていた。  愚痴ったところで何も解決しないのだけど、問題が山積しているだけに、愚痴らずにはいられない状況だった。  とりあえず、この後は学園祭に向けての二年生会議が行われる予定で、生徒会としてその進行を務めなければならないことになっている。早いところ準備を終わらせないと……。  どうして私がそんなことをしないといけないかといえば、私が生徒会副会長で、生徒会長が無責任にこの二学期になって引っ越したからで、今、私が生徒会長の分もやらなければならないからである。 「コピーくらい誰かに頼むんだった……、いちいち連絡入れて用事頼むの遠慮してたら、いつまでたっても忙しいの終わらないって……。三年生の先輩でもいいから手伝ってくれないかしら」  私は悪態を付いた。今までは補佐役に過ぎなかったから、苦に感じることなんてなかったけど、今や人に物を頼むのも億劫になるほどだ。  レジュメを準備するだけで肩が凝るほど時間がかかったのに、コピーまで自分でやっていては時間がいくらあったって足りない。  そうは言っても、いつレジュメ作りが終わるのか想定できないため、なかなか雑用を頼むため人に頼み事をするのはしづらいのだった。
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