第四章「取り戻せない時間」

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 浩二は家で待っている真奈の為にも夜遅くなる前には帰らなければならない。そういった事情もあり一晩泊まるということは出来なかった。 「恋人らしいこと……する?」  どうやって誘っていいのか分からず、眼鏡を外したままの風呂上がりの羽月はベッドに座って落ち着きない様子で言った。  触れ合う前にお風呂に入りたいと言ってしまった経緯もあり、羽月は不自然になっていた。  面白いこと一つ言い合うことなく、緊張感が漂うまま部屋の照明を消して、浩二が恐る恐るベッドに入ってくる。  風呂に入った直後で上気のある火照った様子のまま、互いに求め合うままに肌と肌を触れ合わせ、自分の意思では止めようがないほどに場の雰囲気に飲まれていく。 「すべすべで、綺麗だな。乙女の柔肌ってやつか」  浩二は羽月の艶のある妖艶な素肌の感触に酔いしれながら、素直な感想を述べた。 「浩二の背中大きくって、凄く包まれてる気持ちになる。  やっと、ゆっくり触れていいのよね」  触れ合うたびに身体が敏感に刺激され、この時を待ちわびて、恋焦がれた時間の分だけ、これまで覚えのない快楽を実感して、恋人同士であることを必要以上に意識させられる。  暗い部屋の中でカーテンまで閉め、必要以上にもっともっとと、より体温を温め合う行為が人知れず続いていく。 「ああぁん!! いいっ! もっと……、遠慮しなくていいから……」  段々と触れる手や口がより刺激する場所を探し出して、甲高い喘ぎ声を部屋の中に響かせていく。  最初は遠慮がちだった接触も、次第に快楽を求めあうように刺激的な部位を責め合い、激しい行為に発展していく。 「羽月、もう……、我慢できそうにない」  次第に大きな波が押し寄せてくる。キスを繰り返し、止めようのない興奮の渦に引きずられ、息が荒くなっていくのを肌で感じながら、浩二の方から汗ばんだ身体を密着させていく。 「浩二……、やだぁ……、耳は弱いのよ」  普段はしないような愛撫が、欲望のままに続けられる。  羽月は恥ずかしさのあまり顔をそらそうとするが、そうはさせまいと浩二がさらに刺激を強くする。  段々と息が荒くなり、羽月は仕返しをするように手を伸ばした。 「これが浩二……、本当に浩二なのね」  羽月の手が遠慮がちに浩二の局部に触れる。  その特徴的な感触に羽月は力の入れ具合が分からず戸惑った。  大きく勃起した感触から、我慢できないという浩二の言葉の意味を実感する。  反り上がった肉棒が羽月の手に包まれ、その大きくなった浩二のモノがさらに羽月の手に反応にして張り詰めるように固くなっていく。 「はぁ……大きくなって苦しそう、これが今から私の中に入るのよね……」  熱い吐息がこぼれる中、信じられないという気持ちを抱きながらしみじみと羽月は呟く。 「うん、羽月のこと、欲しがってる。もう、入りたがってるのよ」  互いの意思を確かめ合いながら、愛の入口へとゆっくりと固くなった肉棒を導いていく。 「こんなにドキドキさせられることがあるなんて、本当、信じられないわね」  今から純潔を失うことを意識すればするほど、緊張と興奮を抑えられない。  濡れた膣口にキスをする生殖器、その先に訪れる痛みを予感し羽月は緊張の色を浮かべた。 「大丈夫か?」 「うん、平気よ。一番そばに浩二のことを感じたいから」  もう一度、意思を確かめ合うようにキスをして息を吸っては吐き出す。決心を固めた二人は暗い室内で手を繋いだ。  息を合わせ、グッと腰に力を込めて、羽月の中に固くなった生殖器を浩二は突き入れていく。  痛みを伴う異物が侵入してくる感覚を羽月は鶏鳴に我慢し終えると、息を整えて浩二を全部受け止めた自分を実感した。  男女の交わりが始まってしまうとそこから先は気持ちの高ぶりを示すまま、獣のように、ただ求めあうままに互いに腰を動かして、荒い吐息を吐き出しながら生殖器の出し入れを続け、果てるまでぎこちなくも激しい行為が続けられた。  甘い吐息に包まれながら、好きという気持ちを確かめ合う二人。    名前を呼び合いながら触れ合う時間は、ずっとこの日を忘れられないようにと、より二人の愛を満たしていった。
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