2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
11.事件の真相
「待てっつーてんだろが、おいっ! 川崎っ!」
寮の外に飛び出し、校舎とは反対側の林に駆け込んで行く犯人を、霧島は必死で追いかけた。
だが全力で走る霧島の横を、タオル一枚腰に巻いた古代オリンピック選手かと思われる男が追い越し、犯人にタックルをかけた。
「うわあっ!」
二人はゴロゴロと地面を転がった。
霧島が追いつくまでに、片方が立ち上がる。
「やあ、タキオちゃん」
犯人の腕を掴み、肩で大きく息をしている荒木は、腰巻きのタオルすらもが失われて全裸である。
「ラグビー部にその人ありと知られた、この荒木龍一のタックルを逃れられる奴なんていないもんね」
「何で、僕だって解ったんだ?」
地面に座り込み、荒木に押さえられていた川崎が、霧島の顔を見上げた。
「あ〜っ! 川崎クンじゃないか!」
自分が捕まえた人物の顔を見て、荒木は頓狂な声を上げた。
「あんたが出かけた後に、写真を見つけちまったから…」
「アハハ…、あれは絶対安全な隠し場所だと思ったのに。この寮の連中は、推理小説なんて読まないからね」
「俺も見るつもりは無かったんだけどね。好きな作家だったもんだから…」
すまなさそうに霧島が答える。
「何で川崎クンがパンツ泥棒なのよ」
「荒木にゃ解んねェよ」
「何よそれ」
「…解んねェもんは解んねェの」
霧島は川崎に手を貸し立ち上がらせた。
「寮に戻ろう」
三人は連れ立って歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!