プロローグ

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自分の隣にはもう一人の自分が常に居る 悲しみにうちひしがれている時も 嬉しさで舞い上がっている時も 不安で心が押し潰されそうな時も居る 真っ黒な液晶パネルに潜んでいる時もある 眼を瞑れば其処に居る時もある 霊現象でもなく気配を感じる事もない しかし確かに其処に居る それは抑圧された私自身かもしれない 私は分裂しているのかもしれない 電車の音が聞こえる憂鬱な気分の朝焼け 私の吐き出した煙草の灰色の煙が 照明を落とした部屋の空間に揺れる 私の職業は病院管理栄養士 人は守護神によって適した職業が決まるというが 信用できない戯れ言でしかない 私はこの仕事が向いていないし苦痛でしかない 女職場の陰湿さにはうんざりしている 無駄な女同士の派閥に栄養課は不当に下に見られていて あからさまな態度と言動を顕してくる他職種のコメデイカルスタッフ コメデイカルは皆、ドクターの下なのに それでもコメデイカル同士のピラミッド上下関係が出来上がっている しかも私は給食管理と臨床管理の二つの仕事をしなければならないし 何よりも外部会社の委託給食会社との折衝業務までもしなければならない 調理師は怖いし、給食栄養士や給食だけ管栄のオバサンも ガツガツして浅ましく怖くてややこしい人達に囲まれている 隙があればいつでも陥れられる恐怖感 私は新卒3年目で若くて頼りない直営管理栄養士1人という 立ち位置に置かれているので給食オバサンに舐められており いつも直営の病院サイドと委託の間との理不尽な問題に挟まれて 苦しんでいる もう、本当に辞めたい 今日はずる休みしようかと迷っている そんな精神状態で寝ていたからか 今朝、変な夢を見た 夢の中で戦火後の荒涼とした強い風が吹き荒れる土地に 一人の女性が立ちすくでいる、その女性の躰は透明である 何故か私はその女性がガイヤ(地球)の人型と直感していた その周りには空から舞い降りた狐の仮面を被った人達も降り立ち そして続々と女性の姿をした透明な人達が集まってきた きっとこの中にはそのガイヤの化身であるその女性の大きな守護霊も 同じように透明な人達の中に紛れて其所に居るのであろうと考えていた 私は昨日、彼氏に別れ話しをした とうとう私はキレてしまった もう何もかも嫌になった 彼氏も私の足枷になっている 男は女が仕事で疲労困憊になり 躯と心が疲れている時でも関係なしに電話をしてきて 自分の都合を押し付けてくる そして決まって最後には口喧嘩になる こんな事で簡単に男と女は別れるのか 呆気ないものである 少しは何であんな事を言ったのか 私が結論を急ぎ過ぎたのか 私が我が儘なのか 今更ながら涙が出てきた やっぱり一人は寂しい どうしてこんな事になったのだろう 人間の自己防衛本能かしら 人間の脳は耐えきれない出来事の記憶は抹消する方向に動くと習ったが 私は自分の置かれている自分の環境にヒステリーを起こしてしまった もう、元カレは他人、未練なんかない筈 好きの反対は嫌いじゃなく無関心 寝ている時に見る夢は過去に体験した事ではなく 過去世で体験した事でも見せてくるけど 今朝の夢には何か意味があるのかしら 「幽界と娑婆とは同じ紙の表裏」と平田篤胤も名言を残している そして、なるほどと腑に落ちる内容である あの世があり、それはこの世の続きであると実証はされていないが 私は直感ではこの理を理解している 私はこの世を生きるのがとても苦しいと思うのは 日々衰えていく心と疲弊しきった躯のせいなのか 何故、病院では管理栄養士は軽く見られるのか 給食を提供している「ご飯屋さん」と思われているのか 食事は大切なのに、 日本人が飢餓から解放されたのは高度経済成長期からであり それまでの日本人は常に飢餓と隣り合わせの状態であった 空腹感は人間を不幸にするし飢餓は人の生死を左右する 人類史を二分する最大の指標は飢餓であると言われている 「古屋の濡りは虎より恐ろしい」とアイヌの昔話があり 事実アイヌは何度も大飢饉を幾度も経験している それは本州でも変わらず天明の大飢饉での東北にも当てはまる事である 生死は愛別離苦の苦しみ 私も大切な妹を若くして亡くしている 夢うつつの時は過去に亡くなった妹の気配も常にあるような気がする いくら仕事が管理栄養士でもプライベートの私の食事は レトルトとカップメンと、ほか弁やコンビニ弁当のジャンクフードばかり 出勤日だけは健康重視の薄味な病院食を摂っているので それで食生活の帳尻は合わせている だけどダメよね、私はお酒は飲むし、しかも管理栄養士なのに煙草中毒である 以前は時々、元カレが家に来た時には食事を手作りしていたけれど もう一人分の食事なんて料理する気力もわかない カップ麺ならどうでもいいけど 水だし珈琲なら良い水が必要なので浄水器が必須だわ、と くだらない、こだわりだけは持っている 私がしているブレスレットの石は 元々レインボーオーラの水晶だったが シャワーを浴びる時も寝る時も起きている時も肌身離さず付けているので 汗と水でレインボーカラーは消えたが水晶のままでも綺麗なので 私は気に入っている パワーストーンは左から吸収し右から放出する 仕事中は、石は院内ルールでしてはいないけど プライベートではいつも左腕に付けている 左は吸収でそして潜在能力を高める効果がある 私の夢は結婚して在宅で物書きの仕事をする事である
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