6 それから

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6 それから

「お客さん、着きましたよ。」  タクシーのドライバーが後ろを振り向いた。 「……ん?」  寝入っていた宇田川は、その声に眠りから引き戻された。 「羽田かい?」 「はい。国際線のターミナルです。  随分お疲れのようですね?」 「ああ、ちょっと。」  宇田川は支払いを済ませるとタクシーから降り立った。  腕時計に目を落とすと、すでに22時を回っている。  少し伸びをして、ターミナルビルの中に入って行った。  ターミナルビルの中は、再び眠気を誘うような温かさだった。  搭乗手続きをしようとして、マレー航空のカウンターを探していると、背後から声をかけられた。 「あなた、宇田川道隆さんですね?」 「えっ?」  宇田川はその男の声に驚いて振り向いた。  すると、そこには体格のいい2人の男が、表情に緊張感を滲ませて立っていた。 「お忙しいとは思いますが、少し話を聞かせてもらえますか?」  2人のうち年配の男の方が話しかけてきた。  物腰柔らかく、丁寧な口調だったが、その言葉には有無を言わせないような圧力があった。  そして、もう1人の若い男は、バッジの付いた身分証を見せていた。  そうか……そう上手くはいかないよな、世の中……  宇田川はすべてを悟った。  「ふっ」と小さく息を吐くと、無理を承知で男たちに訊いた。  「電話、掛けさせてもらえませんか?」
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