鍵を探して

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 昼休みに給食はあったのだが彼は牛乳瓶を持つのが苦手だった。片手で牛乳瓶を持つと床に落としてしまうのであった。  クラス担任の教師は不思議がっていた。 「どうして勉強はできるのにそんなことができないの?」彼女はいぶかしがった。 「持てないです」 「持てないの?」 「だめだ」 「何としてもでも一人で飲みなさい」 「はい」 「両手使ってもいいから一人で飲みなさい」  彼は牛乳瓶を両手で持って飲みはじめた。その日、彼は牛乳瓶一本分を飲み干すことはできた。機嫌よくなって昼休みが終わってから教師の話を聞いてミチロウと帰ることにした。 「牛乳飲めたな」ミチロウはほほえんだ。 「ありがとう」  彼は手の力が弱いのか、と自分を心配しはじめた。 「これからはちゃんと飲めるようになるよ」 「ありがとう」彼は礼を言った。 「また変なオヤジが来ていないといいね」 「もう来ないよ」 「どうして?」 「おまわりさんいるもん」 「本当に?」 「昼頃から来ている」 「それはすごいな」  彼の自宅に近づいてきた。 「誰かいるね」彼は言った。 「おまわりさん以外にオヤジがいる」ミチロウは答えた。 「この前来たオヤジだ」 「あのオヤジ見たことある」 「本当?」 「うん」
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