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『私、メリーくん。今教室を出たの』
こんなメールが俺と蓮に届いたのが10分前
それから俺たちに近づいているのがわかるメールが送られ続けている
「蓮、メールの送り主の名前は?」
「メリーくん」
「俺が聞いてるのはそういうことじゃないッ、本名だよッ」
「クククッ、何キレてんの?もしかして怖い?そう言えば、恵梨都おばけ苦手だったけ?」
俺がこういう類を苦手と知っていて、ニヤニヤしながら言ってくるもんだから、タチが悪い。
この男、蓮は、艶やかな黒髪にぱっちりとした目の所謂イケメンだ。
この容姿と気さくな対応から、王子様のようにこの学校では扱われているらしいが、悪魔もびっくりの腹黒野郎だ。
俺には幼い頃からいるせいで、その腹黒さを隠そうともしない。迷惑なやつ。
「うるせーな、苦手じゃないッ、嫌いなだけだ」
「それを苦手って言うんだよ。ほら怖いんだったら、手繋いでやるよ」
「しょうがねーな」
「おい、それは俺の言葉だろ!? しかも手繋ぐだけじゃなくて、腕組んでんじゃん! 言葉と行動を合わせろッ!」
「なんだよ、文句でもあ…ぎゃああああああっっ、な、なに、なに、むり、マジでむり、蓮ッ」
冷たい何かが俺の首筋に当たり、耳元で『私、メリーくん。今あなたの後ろにいるの』と囁かれて、腕を組んでいた蓮に飛びついた
「ハイハイ、お嬢サン、落ち着いてクダサイ。俺が抱っこしてあげてんじゃん。何にも怖くないよー」
「ふへ、ふふふ、んんん、あははははははは、ひーー、マジで恵梨都びびってんじゃん。蓮に飛びつくの早すぎてびっくりしたもん、俺」
この笑うのを我慢しようとして、失敗したこのおにーさんがメリーくんだったらしい。いや、薄々わかってたけど、やっぱ怖いものは怖いじゃん?
しばらく、口もききたくない。結構怖かったし。
「薫くん何やってんの?こんなしょうもないことしてさー。恵梨都が未だに俺から降りてくんないんだけど。まあ、いいけどさー。湊音くんに怒られても俺知らないからな?」
「やっぱり、湊音怒るかな?俺、早まっちゃった?」
「あ、いいこと思いついた!湊音くんにこの情報流して、ご褒美もらおっと♪」
「え゛、蓮ッ、それだけはやめて!?俺の命の燈が消えてしまうッ」
「えー?どうしようかなぁ」
「この前言ってた、カーディガンあげるからっ!な?」
「よし、乗った」
蓮と薫くんのしょうもない会話を聞きながら、俺は中庭に運ばれていた。
もちろん、蓮に抱っこされたまま。
どうして中庭かというと、そこでおにーさんたちと写真を撮るらしい。
あれ、みんなもういるじゃん。
「ごめん、遅くなって」
「全然いいけど、その可愛らしい状態に何でなったのか聞きたいわ」
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