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だって
家に帰ってもまだ痛い耳を母さんに相談した。
「だって、寝ちゃったんだもん」
いや、それは分かったし責めてない。俺は俺の痛いことを相談したいんだ。
「まさか刺さるとは思わなかったし」
そりゃそーだろ、最初から刺そうと思って息子の耳かきするかよ。
「だって……」
母さん俺まだ小一だぜ、ぐずるなよ。
よし、分かった。
「俺を耳鼻科とやらに連れてってくれ」
母さんは、くんっと顎を軽く上げて、それが返事ですのような態度をし、夕飯の支度にとりかかった。
え、むくれてんの? なんで?
俺、小一だぜ?
夜が進むとズキズキ痛みが増す耳に、母さんがタオルを差し出してきた。
それは冷した濡れタオルだった。
不器用な俺の母さんが、恥じらいながら優しさを見せたときだった。
しかし、明日は定休のため明後日までもちこしとなった。
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