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僕の仏壇へ参り終わると、2人はリビングのテーブルで雑談を始めた。
会話のほとんどが峻汰の昔語りであった。
「あいつは…だった」
「あいつと…した」
「あいつの…知っていますか?」
・・・
妻の傍らにいた僕は照れくさい気持ちになっていた。
自分の過去や友人の本音を聞くことは、何とも言えないむずがゆさを覚えさせる。
それと同時に悔しい気持ちが湧き上がる。
もし、生きていたらと。
15分ほど経過しただろうか。
峻汰が仕事に戻ることを伝えて席を立ったその時だった。
妻が1つ質問した。
「夫は…×××は、なぜあの場所にいたんでしょうか?」
その質問を聞いた瞬間、僕は2つの疑問に背筋が凍り付く感覚に襲われた。
1つ目は、あの場所とはどこだ。
2つ目は、今の雑音は何だ。
そして、峻汰はすぐに僕の疑問に対するヒントを告げる。
「×××がにショッピングモールに居た理由ですか?
それは僕にもわかないです…」
そう言い残して、彼は帰って行った。
残された妻と僕は重い空気に包まれる。
2人に共通する疑問は、僕の生前の所在。
そして、僕の疑問は…僕の名前は?
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