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人にはそれぞれ、相対的な価値があるのかもしれない。
誰かにとって大切な人であっても、他の誰かにとってはどうでもいい、あるいは極端なときは害悪であったりする。
そういった思いを巡らせるたびに、自分に人間的な価値があろうと、無価値であろうと、あるいは誰かに愛されようと、愛されまいと、そう大した意味の違いはない。
僕はそう考える。
僕がメルと出会ったのは、東京近郊のアパートを引き払って帰郷することを決めたあとだった。
僕は、都内の会社を退職したあと、二週間ほどの時間を帰郷準備と激務後の休息に充てた。
引っ越し業者との打ち合わせや、アパートの管理会社や電気ガス水道各社への連絡をこなし、その合間を縫って親交のあった友人や過去の職場の仕事仲間、馴染みの店等を訪ね、別れのあいさつを交わした。
そんな日々に、僕は純粋に好奇心を満たしたい思いで、ほとんど衝動的に、とある店に電話で予約を入れた。吉原のソープランドである。
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