マシュマロと恋の味

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 つまんでいたマシュマロを口に放り込むと、ただの甘ったるい味だった。もっともっと口の中を甘くしたくて袋に手を突っ込んで掴んだマシュマロをどんどん口へ運んだ。  頬にいっぱいになったそれを噛んで噛んで甘さとともにショックを飲み込んだ。食べ過ぎた甘ったるさに胸やけしながら私はベッドに突っ伏した。あーあ。あーあっていうそれだけしかなくて私は長い時間ベッドに顔を埋めていた。失意のどん底みたいな気分だけど、それでも次に八谷くんに会ったらデートは延期だねって笑顔で言うの。八谷くんが私と付き合ったことで部活にかける時間に罪悪感なんて微塵も感じてほしくないから、全然がっかりなんてしてない素振りを見せるんだ。だから今だけは、ひとりきりで思う存分がっかりしておこう。  ひとりで悲劇のヒロインのような気持ちに浸っていたのに部屋のドアの向こうからお母さんが「ごはんよー」って三回ほど呼んできて現実に引き戻される。「あとで食べるー!」と叫び返すと、出した大声でちょっとスッキリしたおかげで積み重ねていたマンガ本を片付ける気力が湧いてきた。  部屋を綺麗に片付けて、もう用無しになった明日にむけたコーディネートを見納めようと姿見の前に立ち、いっそのこと小鼻の角栓を爪で押し出してやろうかという自暴自棄な気分になったところでスマホがブーンと鳴った。
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