マシュマロと恋の味

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『今、花村さん家の近くの公園にいる。出てこれる?』  理解するまでに五回読み直した。  部屋を飛び出して、お母さんに「ちょっとそこまで出てくる!」と叫んだら「えー、どこ行くの」と不満気な声が返ってきたから「公園まで」と答えて玄関で焦りながらブーツに足を突っ込んでいると、スリッパの音とため息と「暗いから気をつけて」という声が背中を押した。  勢いよく玄関を出て駆け出す。    近くの公園ってマンションに併設してるようなほんとに近いところで、だから私はエントランスを出た瞬間に八谷くんを見つけることができた。  ブランコの前の手すりに腰掛けていた八谷くんが顔をあげてちょっと驚いた顔をして立ち上がる。  外の暗さが八谷くんとの非日常を感じさせてなんだか胸が締めつけられる。 「八谷くんっ」  妄想と現実がごちゃ混ぜになって、駆け寄ったまま思わず制服の胸の中に飛び込んだら、グラウンドと石鹸と八谷くんの混ざったにおいが心地よくてこれは生物学的に相性がいいってことだな、と思ったところで抱きついたのなんて初めてだったことに気づいて慌てて飛び退いた。  わあ、とか、あの、とかえーと、とか意味をなさない言葉と定まらない視線が八谷くんと私の隙間を泳ぎまくる。
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