マシュマロと恋の味

2/14
前へ
/14ページ
次へ
 気を取り直して、自分の部屋にいって制服のブレザーを脱ぐ。部屋着に着替える前にやることがあった。  タンスとクローゼットから、めぼしい服を片っ端からひっぱり出す。スカートもかわいいけど、オフショルダーのニットにパンツを合わせてもいいかも。ホットパンツだと気合い入れすぎて引かれたら嫌だし、ここはおとなしくスキニーかな。ああでもやっぱりデートだからワンピースが定番かもしれない。あまり気張りすぎるのもよくないし、ニットワンピはどうだろう。明日は電車に乗って水族館に行く予定だから、動きやすさはさして重要じゃないはずだ。かわいく見えるほうがいい。だけどそれより他愛もない会話を覚えてて水族館に誘ってくれる八谷くんのほうがかわいすぎる。いや外見はガタイが良くてかわいいとは対極なんだけど、寡黙な八谷くんだからこそ、そのギャップに萌えるといいますか。 「花村さん、前に好きだって言ってたから。魚」  昼休み、見上げた八谷くんの口が動きながらそんなこと言ってた。話すときにほんの少し覗く歯とか、発音のためだけに動かされてる唇とか。  八谷くんの唇。  いつのまにか大量に並べた服たちの真ん中に座り込んでジタバタしていた私は、ふと自分が下着姿だったことを思い出した途端に寒くなった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加